ガーゴイレオサウルス・パルクピノルム (
Gargoyleosaurus parkpinorum ガルゴイレオサウルスとも)は、アメリカはワイオミング州アルバニー郡のボーン・キャビン発掘場から発見された鎧竜です。
教会の屋根に配置される奇怪な姿をした雨どいであるガーゴイルに因んで命名されました。
ボーン・キャビン発掘場はモリソン累層ということで、ガーゴイレオサウルスが生息していた時代はジュラ紀後期キンメリッジ期(およそ1億5000万年前頃)だそうです。生息時期が被っていた恐竜としてはディプロドクス、カマラサウルス、ブラキオサウルスといった竜脚類、アロサウルスやケラトサウルス等の獣脚類、ステゴサウルスやカンプトサウルス、ドリオサウルス等がいます。
※ボーン・キャビン発掘場は、1900年代初期にアメリカ自然史博物館が発掘を始めた場所だそうで、その後はウェスタン古生物学研究所(Western Paleontological Laboratories, Inc. 民間の化石業者で、ヨコハマ恐竜博ダイノワールド2015の標本はほとんどココのものみたいです。ガーゴイレオサウルスも展示されていましたね。また、他の展示物も上記の同時期の恐竜達でした。まさしくモリソン祭り状態)が発掘を進めていたそうです。
ガーゴイレオサウルスの想像図。 ガーゴイレオサウルスのホロタイプDMNH27726では、完全な頭骨と部分的な体の骨格が知られています。この標本は1996年にウェスタン古生物学研究所が発掘したもので、1998年にデンヴァー自然科学博物館のケネス・カーペンター博士らによって記載されました。当初はG.
parkpini と命名されましたが、2001年に種小名が
parkpinorum に改名されたそうです。他にも2つ標本が見つかっており、これによってほぼ全身の骨が復元できる様になった為、全身骨格がデンヴァー自然科学博物館に展示されています。
体長は3m程と推定されています。体重についてはWikipediaでは1t程になったのではないかと記されていますが、G.ポール博士の推定では300kg程とされています。
頭骨は「吻部が細い」、「前後の長さと後頭部の幅がほぼ同じ」、「クチバシにノッチ(切れ込みのこと。この特徴は白亜紀前期のガストニア・ブルゲイ_
Gastonia burgei にも見られる)がある」、「上顎のクチバシ部分にも歯がある」、「二次口蓋を持たない」といった特徴が見られます。頭骨の表面には沢山の小さな隆起があり、これはウロコの痕ではないかとされます。首にはアンキロサウルス類の様な2対のリング状プレートがあり、さらに横方向に長いトゲが並んでいました。このトゲは後方に窪みがあり、後列のトゲが窪みに嵌まり込み事で首を曲げる事ができたのではないかとカーペンター博士は述べています。
「ヨコハマ恐竜博ダイノワールド2015」で展示されたガーゴイロサウルスの頭部から首にかけての骨格。クチバシにも歯が残っています。 ガーゴイレオサウルスの分類については、「Dino Press Vol.3」にケネス・カーペンター博士による詳しい記事が載っています。しかし、発売から14年経過した現在では若干話が変わって来ている様なので、以下に新しい情報を。
・元々鎧竜にはノドサウルス科 (細長い頭部と長いトゲ状の装甲を持つ)とアンキロサウルス科 (幅広 な丸い頭部と尻尾の先端にハンマーの様なコブを持つ)の2つの系統があるとされていたが、ガーゴ イレオサウルスやガストニア、ミモオラペルタ等の鎧竜が発見された事でカーペンター博士やジェー ムズ・カークランド博士らはそれらが近い系統にあるとして90年代後半にポラカントゥス科 という分 類単位が使われ始めた ※ポラカントゥス科という分類自体は、ジョージ・ウィーランド博士により1911年に既に提唱されて いたものである ・ポラカントゥス科は、【頭部は後部に大きな角がある】、【後頭顆が三日月形をしている】等、アン キロサウルス科に似た特徴を持つが、【長いトゲ突起を持つ】点ではノドサウルス科にも似てい る。しかし、【トゲの後方に窪みがある】、【肩甲骨の肩峰が張り出している】、【骨盤の上の装甲 は融合して1枚の盾の様になっている】など、アンキロサウルス科ともノドサウルス科とも異なる 特徴があるので、鎧竜類の中の3番目の系統として注目された ・2004年の「THE DINOSURIA 2nd edition」では最も基盤的なアンキロサウルス科となっていたが、 これは頭部の特徴のみから ・2012年のリチャード・トンプソン博士らの系統解析では、ポラカントゥス類は自然分類群ではなく、 原始的なノドサウルス類をまとめただけ、あるいは、”科”とするのは不適切で、「ノドサウルス科 の中のポラカントゥス亜科」とするのが妥当とされた ・よって現在ではガーゴイレオサウルスは基盤的なノドサウルス類ということになる
と、いった感じの様です。Wikipediaでポラカントゥス類を調べると上記の様に【適切な分類群ではない】と出てきます。しかし、ガーゴイレオサウルスで調べると、【ノドサウルス科の中のポラカントゥス亜科】となっており、さらにノドサウルス類の項目では、ガーゴイレオサウルスはノドサウルス類の基部に配置されていました。まぁ、”基盤的なノドサウルス類”というのが現状では適切な分類の様です。
参考文献:「恐竜学最前線5」学研、「Dino Press Vol.3」オーロラ・オーバル社、「THE PRINCETON FIELD GUIDE TO DINOSAURS」Gregory S. Paul Princeton University Press、「THE DINOSURIA 2nd edition」 UNIVERSITY OF CALIFORNIA PRESS、英語版Wikipedia「
Gargoyleosaurus 」「Polacanthinae」「Nodosauridae」
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