昆虫から分岐分析を学ぶ(1)
- 2015/09/17
- 01:17
学生の頃、昆虫の行動学などをやっていたので、一時期昆虫関係の仕事をしていた事があります。この時に昆虫を科レベルで同定するという業務があったのですが、その作業を通して分岐分析の手法とはどういうものかを学びました。
そもそも分岐分析という系統関係を探る方法自体、ドイツの昆虫学者ヘニッヒ博士が提唱したものなので、昆虫の同定をするには分岐分析的な手法に則って行うのは当然っちゃあ当然ですね。
例えばハエの仲間について。
ハエ類(双翅類 Diptera 現生動物の場合、現在でも普通にリンネ式分類がされるのでハエ目が一般的な呼称でしょうか)にはいわゆるハエ、カ、アブの系統があります。ここで、双翅類の中のクロバエ科にたどり着くまでを見てみましょう。
※クロバエ科はいわゆるキンバエが含まれる科で、典型的なハエです。
まず、翅の状態。普通翅を持つ昆虫は2対4枚の翅を持ちますが、双翅類では、【後翅が平均棍という棒状の器官に変化しており、見かけ上、2枚しか翅を持たない(中には2次的に翅を失った種類もいる)】という共通した形質があります。これで色々ある昆虫の系統から双翅類であることが分かります。
双翅類には大きく分けてカの仲間とハエの仲間があります。この内、カの系統を糸角類(糸角亜目 Nematocera)と言い、【触覚の鞭節という箇所が6節以上からなり、各節が融合しない】という形質を共有しています。ユスリカ科などはオスが立派なフッサフサの長い触覚を持っているのが良くわかる種類です。
ハエの系統は短角類(短角亜目 Brachycera)といい、【触覚の鞭節という箇所が1~8節からなり、各節が融合して動かないか、第1鞭節が非常に大きく先端に棘毛を持ち第2鞭節以降は退化する】という形質を共有しています。
双翅類――――――糸角類
|――短角類
短角類は伝統的に2つの系統に分かれるとされました。1つはアブの仲間(直縫短角類 Orthorrhaphous brachycera)で、もう1つはハエの仲間(環縫短角類 Cyclorrhaphou sBrachycera)です。
しかし環縫短角類が単系統であるのに対し、最近の研究では直縫短角類は色々な系統を寄せ集めた側系統であるとされます。直縫短角類は蛹が垂直方向に割れるという共通点がありますが、これは共有派生形質ではなく、共有原始形質というんだそうです。つまり、ある祖先が獲得した新しい形質を、複数の系統の子孫が受け継いだのではなく、古い形質を残したままの幾つかの系統について、その形質を共有派生形質と間違えて捉えていたということですね。
言ってしまうと、短角類は、【額嚢線(蛹のカラを破る"額嚢"という器官のなごり)を持つ】ハエ(これがハエの共有派生形質)と、その他のアブ(+アブっぽい連中)という様な感じになります。
意外と長くなってきたので、次回に続きます。
そもそも分岐分析という系統関係を探る方法自体、ドイツの昆虫学者ヘニッヒ博士が提唱したものなので、昆虫の同定をするには分岐分析的な手法に則って行うのは当然っちゃあ当然ですね。
例えばハエの仲間について。
ハエ類(双翅類 Diptera 現生動物の場合、現在でも普通にリンネ式分類がされるのでハエ目が一般的な呼称でしょうか)にはいわゆるハエ、カ、アブの系統があります。ここで、双翅類の中のクロバエ科にたどり着くまでを見てみましょう。
※クロバエ科はいわゆるキンバエが含まれる科で、典型的なハエです。
まず、翅の状態。普通翅を持つ昆虫は2対4枚の翅を持ちますが、双翅類では、【後翅が平均棍という棒状の器官に変化しており、見かけ上、2枚しか翅を持たない(中には2次的に翅を失った種類もいる)】という共通した形質があります。これで色々ある昆虫の系統から双翅類であることが分かります。
双翅類には大きく分けてカの仲間とハエの仲間があります。この内、カの系統を糸角類(糸角亜目 Nematocera)と言い、【触覚の鞭節という箇所が6節以上からなり、各節が融合しない】という形質を共有しています。ユスリカ科などはオスが立派なフッサフサの長い触覚を持っているのが良くわかる種類です。
ハエの系統は短角類(短角亜目 Brachycera)といい、【触覚の鞭節という箇所が1~8節からなり、各節が融合して動かないか、第1鞭節が非常に大きく先端に棘毛を持ち第2鞭節以降は退化する】という形質を共有しています。
双翅類――――――糸角類
|――短角類
短角類は伝統的に2つの系統に分かれるとされました。1つはアブの仲間(直縫短角類 Orthorrhaphous brachycera)で、もう1つはハエの仲間(環縫短角類 Cyclorrhaphou sBrachycera)です。
しかし環縫短角類が単系統であるのに対し、最近の研究では直縫短角類は色々な系統を寄せ集めた側系統であるとされます。直縫短角類は蛹が垂直方向に割れるという共通点がありますが、これは共有派生形質ではなく、共有原始形質というんだそうです。つまり、ある祖先が獲得した新しい形質を、複数の系統の子孫が受け継いだのではなく、古い形質を残したままの幾つかの系統について、その形質を共有派生形質と間違えて捉えていたということですね。
言ってしまうと、短角類は、【額嚢線(蛹のカラを破る"額嚢"という器官のなごり)を持つ】ハエ(これがハエの共有派生形質)と、その他のアブ(+アブっぽい連中)という様な感じになります。
意外と長くなってきたので、次回に続きます。
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