幻獣の名を冠する恐竜シリーズ17 キチパチ(2)_元ネタ
- 2015/10/13
- 00:11
キチパチの元ネタはチベット密教の護法神である【チティパティ】です。種小名はモンゴルの恐竜発掘に多大な貢献をしたポーランドの女性研究者、ハルスカ・オスモルスカ博士に献名されました。
※以下、恐竜と元ネタがゴッチャにならない様、神様の方は【】付きにします。
【チティパティ】は人骨で出来た錫杖を持った2体の骸骨が絡み合いながら踊る姿で表される神様です。【チティパティ】とはサンスクリット語で「火葬場の王」とか「墓場の主」といった意味で、漢字では”屍陀林王”と記されるそうです。屍陀林(または尸陀林、しだりんと読む)とは仏教の説話によると、マガダ国の王捨城の北方にあった死者を埋葬する場所の事で、転じて墓場の事を言う様になったそうです。まぁ、サンスクリット語の意味をまんま漢字にしたという事ですね。

これが【チティパティ】。Wikipediaより。
恐竜の方しか興味ない人からすると、結構衝撃的な姿かも?
恐ろし気な外見ですが、骸骨の姿であるのは、「命あるものはいずれ死す」という諸行無常を体現している為という事です。チベットにおいては、マハーカーラの化身の1つとも考えられているそうです。
もともとインドに起源を持つ神様なのかと思って調べてみたんですけど、ちょっと分からなかったです。マハーカーラが住むとされるシャマシャナの林と言うのが漢字で尸林と書く事、マハーカーラも【チティパティ】も額に第3の目を持つ事、【チティパティ】が夫婦で踊る姿がヒンドゥー教のシヴァ神とパールヴァティ神に似ている事などから、インドの伝承を取り込んでチベットで独立して考えられた神ではないかとは思いますが。
キチパチの名前の元ネタとして【チティパティ】が採用された理由ですが、少なくとも書籍で解説されたのを読んだ事がありませんでした。金子隆一氏の「最新恐竜学レポート」でも記載論文に理由が書いてなくて意味がわからない、となっていましたし。
ところが、Wikipediaの「キチパチ」のページを見て、初めて理由がわかりました。キチパチの発見時、1mも離れていない場所に、後にカーン・マッケンナイ_Khaan mckennaiとされる別のオヴィラプトル類の化石があり、その並んでいる様子が2体の骸骨で現されるチティパティの様であったから、ですって!!あ、カーンはジンギスカンのカンのことで、大王っつー意味みたいですよ。
因みに、キチパチとカーンは非公式に「ロミオとジュリエット」と呼ばれていたらしいです。これは、この2頭がオスとメスではないかと考えられたから、という事です。
【チティパティ】の逸話として、『元々チティパティは苦行僧の夫婦であったが、ある時二人で深い瞑想に入った。その際に泥棒がやってきて二人の首を刎ねてしまったが、あまりにも深く瞑想に没入していた彼らは、己の首が切られた事にも気付かなかった。』というものがあります。この様な出自ゆえ、【チティパティ】に祈る事で泥棒除けのご利益があるといいます。また、病魔退散の職能も担うと言います。
この話を読んで、はっとしました。キチパチの発見により、オヴィラプトル類の”卵泥棒”という名前が濡れ衣であったことがほぼ確定した訳です。しかし、オヴィラプトルの学名が正式な手順を踏んで命名された以上、変更する事はできません。そこで、泥棒除けのご利益を持つ護法神の名を新しい眷属に与える事で、卵泥棒ではなく、むしろ卵を守護していた動物であるとしたかったのではないでしょうか。記載論文に名前を連ねているバルスボルド博士は、前々からオヴィラプトル類は卵泥棒ではないと主張していましたので、その様な理由で【チティパティ】の名を推したんじゃないかという気がします。アメリカの研究者たちも乗っかって、この名を与えることで、卵泥棒の汚名を雪ごうと考えたんではないかと、そう思います。
参考文献:「最新恐竜学レポート」金子隆一著 洋泉社、英語版Wikipedia「Citipati (Buddhism)」
※以下、恐竜と元ネタがゴッチャにならない様、神様の方は【】付きにします。
【チティパティ】は人骨で出来た錫杖を持った2体の骸骨が絡み合いながら踊る姿で表される神様です。【チティパティ】とはサンスクリット語で「火葬場の王」とか「墓場の主」といった意味で、漢字では”屍陀林王”と記されるそうです。屍陀林(または尸陀林、しだりんと読む)とは仏教の説話によると、マガダ国の王捨城の北方にあった死者を埋葬する場所の事で、転じて墓場の事を言う様になったそうです。まぁ、サンスクリット語の意味をまんま漢字にしたという事ですね。

これが【チティパティ】。Wikipediaより。
恐竜の方しか興味ない人からすると、結構衝撃的な姿かも?
恐ろし気な外見ですが、骸骨の姿であるのは、「命あるものはいずれ死す」という諸行無常を体現している為という事です。チベットにおいては、マハーカーラの化身の1つとも考えられているそうです。
もともとインドに起源を持つ神様なのかと思って調べてみたんですけど、ちょっと分からなかったです。マハーカーラが住むとされるシャマシャナの林と言うのが漢字で尸林と書く事、マハーカーラも【チティパティ】も額に第3の目を持つ事、【チティパティ】が夫婦で踊る姿がヒンドゥー教のシヴァ神とパールヴァティ神に似ている事などから、インドの伝承を取り込んでチベットで独立して考えられた神ではないかとは思いますが。
キチパチの名前の元ネタとして【チティパティ】が採用された理由ですが、少なくとも書籍で解説されたのを読んだ事がありませんでした。金子隆一氏の「最新恐竜学レポート」でも記載論文に理由が書いてなくて意味がわからない、となっていましたし。
ところが、Wikipediaの「キチパチ」のページを見て、初めて理由がわかりました。キチパチの発見時、1mも離れていない場所に、後にカーン・マッケンナイ_Khaan mckennaiとされる別のオヴィラプトル類の化石があり、その並んでいる様子が2体の骸骨で現されるチティパティの様であったから、ですって!!あ、カーンはジンギスカンのカンのことで、大王っつー意味みたいですよ。
因みに、キチパチとカーンは非公式に「ロミオとジュリエット」と呼ばれていたらしいです。これは、この2頭がオスとメスではないかと考えられたから、という事です。
【チティパティ】の逸話として、『元々チティパティは苦行僧の夫婦であったが、ある時二人で深い瞑想に入った。その際に泥棒がやってきて二人の首を刎ねてしまったが、あまりにも深く瞑想に没入していた彼らは、己の首が切られた事にも気付かなかった。』というものがあります。この様な出自ゆえ、【チティパティ】に祈る事で泥棒除けのご利益があるといいます。また、病魔退散の職能も担うと言います。
この話を読んで、はっとしました。キチパチの発見により、オヴィラプトル類の”卵泥棒”という名前が濡れ衣であったことがほぼ確定した訳です。しかし、オヴィラプトルの学名が正式な手順を踏んで命名された以上、変更する事はできません。そこで、泥棒除けのご利益を持つ護法神の名を新しい眷属に与える事で、卵泥棒ではなく、むしろ卵を守護していた動物であるとしたかったのではないでしょうか。記載論文に名前を連ねているバルスボルド博士は、前々からオヴィラプトル類は卵泥棒ではないと主張していましたので、その様な理由で【チティパティ】の名を推したんじゃないかという気がします。アメリカの研究者たちも乗っかって、この名を与えることで、卵泥棒の汚名を雪ごうと考えたんではないかと、そう思います。
参考文献:「最新恐竜学レポート」金子隆一著 洋泉社、英語版Wikipedia「Citipati (Buddhism)」
スポンサーサイト