スピノサウルス科_スピノサウルス（Spinosaurus）_2

恐竜博2016での見どころが短足スピノサウルスということで、スピノサウルスの復元の新旧比較なんぞを。


まずは、90年代より前に良く見られたゴジラ立ちの復元。
　1915年にエルンスト･シュトローマー博士がスピノサウルス･アエギプティアクスを記載した際に論文に掲載された簡易的な骨格図に基づいて描いてみました。顔の雰囲気なんかは、チャールズ･ナイト御大を参考に。
　80年代の図鑑に載っていたイラストは大体こんな感じでしたが、結構4本足で描かれているものが多いです。シュトローマー博士の骨格図を見ると、下顎のくびれがしっかりと描かれていて、スピノサウルスが他の獣脚類とは異なる特殊化した動物である事が分かります。四肢は見つからなかったそうで、前脚には指が4本ありますね。


続いて90年代初頭～2014年までメジャーだった復元。
　1983年に発見され、1986年に記載されたバリオニクスですが、その研究を行ったアラン･チャーリッグ博士、アンジェラ･ミルナー博士によりバリオニクスとスピノサウルスの顎に共通した特徴がある事が指摘されました。その後、フランスの古生物学者エリック･ビュフェトー博士がスピノサウルス（と思しき）断片的な標本をバリオニクスと比較して、スピノサウルスとバリオニクスが同じ系統に属する動物であると証明しました。これが1989年の論文だったそうで、90年代からだんだんとワニ顔スピノが普及していきました。
　決定的にスピノサウルスの知名度が上がったのは、2001年のジュラシックパーク3への登場ですか。まさか、ティラノサウルスをブチ殺し、鉄柵をものもとせず主人公一行を追い回すヒールとして登場するとは。議論になりましたが、やはりスピノサウルスではティラノサウルスに勝つ事は無理でしょうね。ただ、最大17mにもなったというスピノサウルスには、流石のティラノサウルスもおいそれとは手が出せなかったんじゃないかと思います。


最後は2015年に発表された「半水生の短足復元」です。
　未だに反論も多いこの復元ですが、元々胴体が長いというスピノサウルス、部分的に4足歩行もしていたかもというのは昔から言われていました。なので、ある意味、学説のリバイバルという事ですね。
　昔の説と異なるのは、腕の付き方が違うという事です。昔は獣脚類の腕の復元は手の甲が前方（頭側）を向く様に復元されていた為、手のひらを地面に着ける様なイラストが描かれていました。
　現在では、獣脚類の腕は、手の甲が体の側面を向く様に付いていたとされますので、手のひらを地面に着けると不自然になってしまいます。その為、指を内側に丸め込んでゴリラの様にナックルウォークをしていた可能性が指摘されています。

参考文献：「恐竜2009 砂漠の奇跡」図録、「Dino Press Vol.4」オーロラ･オーバル社、「新恐竜伝説」金子隆一著 早川書房