ティラノサウルス科_ズケンティランヌス
- 2014/11/14
- 23:00

ズケンティランヌス(Zhuchengtyrannus magnus)は2009年に中国山東省南東部の諸城市(ジョウチョンと読むそうです)で発見され、2011年にロンドン大学のデヴィッド・ホーン博士、中国科学院古脊椎動物・古人類研究所のコーウィン・サリバン博士、徐星博士らによりティラノサウルス科の新属新種として記載された大型の肉食恐竜です。名前は「偉大な諸城の暴君」という意味です。本当は発見地にちなみ、ジョウチョンティランヌス、あるいは綴りに忠実にローマ字読みでズーチェングティランヌスと読むべきかと思いますが、「恐竜王国2012」でズケンティランヌスと紹介されて世間的にはそっちの方が有名なので、そっちの呼び方で紹介します。
最初に発見されたのは右の上顎骨と左の歯骨で、後に肋骨や尾椎、脛骨、中足骨等が発見されています。リトロナクスの記載の際に行われた系統解析では、モンゴルで見つかるタルボサウルスに最も近縁であるとされました。上顎骨は長さ64cmもあり、有名なティラノサウルスの標本AMNH5027より1cm短いだけとかなり大型である事が分かります。推定される体長は約11~12mで、同じくアジアの大型ティラノサウルス科であるタルボサウルスの平均体長を上回るとされており、現状、アジア最大のティラノサウルス科と言えます。上顎の骨の上に伸びる突起の基部に水平の棚が発達する、上顎骨窓(maxillary fenestra)の前方の縁に丸みを帯びた切れ込みがあるという独自の特徴が見られ、これらにより他のティラノサウルス類と区別されています。

頭部の拡大画像。他のティラノサウルス類とは細かな違いが頭骨に見られますが、生きていた時にはほとんど分からない差だったと思われます。
諸城からは他にもフアシアオサウルス、ズケンゴサウルスといった最大級のカモノハシ竜(最近では恐らくシャントゥンゴサウルスの新参異名とされる)やアジア初のケラトプス類であるシノケラトプスが発見されており、これらの動物を獲物としていたと推測されます。


シノケラトプスやズケンゴサウルスを襲うズケンティランヌス。復元骨格の出来がイマイチなのが残念。
中国諸城市恐竜博物館に復元骨格が組まれており、上記の「恐竜王国2012」でも展示されましたが、ほとんどの部位が近縁種からの推定に基づいており、正直あまりデキの良くないティラノにしか見えないという悲しい状態でした。
記載者の一人のホーン博士は、「地名+サウルス」という名前の付け方は好きではないと自身のブログで書いていますが、なぜかズケンティランヌスは地名が入っています。中国側から圧力でもかかったのかと邪推してしまいますね。
参考文献:「世界最大 恐竜王国2012」図録
スポンサーサイト