アロサウルス上科について(9)_カルカロドントサウルス科_カルカロドントサウルス
- 2016/10/26
- 07:47
大分、ご無沙汰しておりました。久しぶりに更新致します。
今回はカルカロドントサウルスです。

▼発見史
1924年、アルジェリアの大陸断層地下水層(Continental Interclaire)で2本の歯が発見され、1925年にフランス人古生物学者シャルル・ドペレ博士とJ.サヴォルニン博士によりメガロサウルス・サハリクス( Megalosaurus saharicus )と命名されました(後に同研究者達がドリプトサウルス属に変更している)。
1931年、ドイツの古生物学者エルンスト・シュトローマー博士は、1914年にエジプトのバハリア層で発見されていた頭骨の一部、歯、脊椎、部分的な腰の骨、左足の一部などを研究し、歯の特徴から、これがメガロサウルス・サハリクスと同一の恐竜であると判断しました。その上で、新属とするのが妥当であるとし、カルカロドントサウルス・サハリクス( Carcharodontosaurus saharicus )として改名しました。このホロタイプIPHG1922はミュンヘンへ運ばれましたが、1944年に第2次世界大戦中のミュンヘン大空襲により焼失してしまいました(この際、スピノサウルスのホロタイプも焼失している)。
カルカロドントサウルスという名前は、ギリシャ語で”ギザギザの歯”+”トカゲ”という意味だそうです。カルカロドンとはホオジロザメの学名ですので、”ホオジロザメのトカゲ”とも訳されます。
1995年、モロッコ東端付近(最初の歯が発見された場所からそう遠くない場所らしい)のケムケム層から、より完全な頭骨が発見され、シカゴ大学のポール・セレノ博士により研究されました。新標本はSGM-Din 1とナンバリングされていますが、SGM-Din 1とホロタイプIPHG1922で発見されている同じ部位は合致した為、SGM-Din 1はカルカロドントサウルスであると同定されました。
2007年、SGM-Din 1はセレノ博士とブルサッテ博士によりネオタイプ(新基準標本、ホロタイプが行方不明になった場合に指定される)に指定されました。この際、ニジェールのEchkar層で発見された部分的な頭骨(上顎骨と脳函)をカルカロドントサウルスの第2の種、C.イグイデンシス( Carcharodontosaurus iguidensis )として記載しました。ソースが見つからなかったんですが、この標本はキメラ(異なる動物の骨を1つの動物と誤認したもの)である可能性があるそうです。
▼特徴
カルカロドントサウルスの歯は非常に特徴的です。左右に薄く前後に幅広い、他の獣脚類と異なりあまりカーブしていない、他の獣脚類の歯よりもセレーションがずっと大きく縁に沿ってシワの様になっている、といった感じだそうです。
頭骨は非常に幅が狭く、上下に高さがある事が特徴で、吻部の先端に稜があり、目の上には外側に張り出した棚が見られます。長さは1.6mと推定されており、重さを軽減させる為、骨の内部には沢山の空洞があるそうです。
シュトローマー博士が記載した部分にもセレノ博士が記載した部分にも脳函が含まれていた為、脳のエンドキャストの研究も行われています。2001年にハンス・C.E.ラーソン博士によると、前脳はほぼ水平で、続く中脳は後方に45°傾斜しているそうです。さらに続く後脳は40°傾斜していて、全体的な構造はアロサウルスの脳に似ていると言います。ヒトの脳の1/15程しか容量がなく、ティラノサウルスはカルカロドントサウルスよりも1.5倍ほど脳が大きいそうです。とは言え、大型獣脚類の中では標準的な脳サイズなんだとか。
系統としては、ギガノトサウルスやマプサウルスと共にカルカロドントサウルス科に含まれます。下顎は発見されていない為か、下顎の形状が全然違う2種の復元頭骨が見られます。

1996年に発表されたモデル。下顎がアロサウルスみたいに薄いタイプ。
鼻先が長く細長い。リニューアル前の科博で展示されてました。

2010年の大阪で開催された「大恐竜博」で展示された下顎がゴツいタイプ。写真は福井県立恐竜博物館で展示されているものです。上角骨の上下の厚さが上の写真のタイプの倍はありますね。鼻先の長さも違います。
カルカロドントサウルスでは下顎のパーツが見つかっていないので、アクロカントサウルスを参考にしてるのかな?
▼生態
体長は12m~13.3m、体重は6~15t程ではないかと推定されています。足跡化石より、時速32kmで移動できたとも言います。生息していた時期は白亜紀後期セノマン期(1億~9400万年前)で、当時生活していた環境は海岸沿いのマングローブが茂る様な場所であり、スピノサウルスと生息地がカブっていました。ただ、スピノサウルスは魚食性の為、上手く棲み分けができていたと考えられています。他には大型の肉食恐竜バハリアサウルスとも生息環境を共有していた様です。こちらとは好む獲物が異なっていたのかもしれません。
当時のマングローブ環境は現在とは異なり、被子植物ではなく塩分耐性の高い木性シダ類のウェイチセリアで構成されていたといいます。ここからはティタノサウルス類の竜脚類パラリティタンが発見されています。推定で26m前後にもなる大型のカミナリ竜で、多少なりとも装甲も持っていた様ですが、カルカロドントサウルスの主な獲物ではないかとされます。
参考文献:「Dino Press Vol.5」オーロラ・オーバル社、「恐竜たちの地球」冨田幸光著 岩波新書、「恐竜2009 砂漠の奇跡」図録、「THE PRINCETON FIELD GUIDE TO DINOSAURS」Gregory S. Paul Princeton University Press、Wikipedia「Carcharodontosaurus」
今回はカルカロドントサウルスです。

▼発見史
1924年、アルジェリアの大陸断層地下水層(Continental Interclaire)で2本の歯が発見され、1925年にフランス人古生物学者シャルル・ドペレ博士とJ.サヴォルニン博士によりメガロサウルス・サハリクス( Megalosaurus saharicus )と命名されました(後に同研究者達がドリプトサウルス属に変更している)。
1931年、ドイツの古生物学者エルンスト・シュトローマー博士は、1914年にエジプトのバハリア層で発見されていた頭骨の一部、歯、脊椎、部分的な腰の骨、左足の一部などを研究し、歯の特徴から、これがメガロサウルス・サハリクスと同一の恐竜であると判断しました。その上で、新属とするのが妥当であるとし、カルカロドントサウルス・サハリクス( Carcharodontosaurus saharicus )として改名しました。このホロタイプIPHG1922はミュンヘンへ運ばれましたが、1944年に第2次世界大戦中のミュンヘン大空襲により焼失してしまいました(この際、スピノサウルスのホロタイプも焼失している)。
カルカロドントサウルスという名前は、ギリシャ語で”ギザギザの歯”+”トカゲ”という意味だそうです。カルカロドンとはホオジロザメの学名ですので、”ホオジロザメのトカゲ”とも訳されます。
1995年、モロッコ東端付近(最初の歯が発見された場所からそう遠くない場所らしい)のケムケム層から、より完全な頭骨が発見され、シカゴ大学のポール・セレノ博士により研究されました。新標本はSGM-Din 1とナンバリングされていますが、SGM-Din 1とホロタイプIPHG1922で発見されている同じ部位は合致した為、SGM-Din 1はカルカロドントサウルスであると同定されました。
2007年、SGM-Din 1はセレノ博士とブルサッテ博士によりネオタイプ(新基準標本、ホロタイプが行方不明になった場合に指定される)に指定されました。この際、ニジェールのEchkar層で発見された部分的な頭骨(上顎骨と脳函)をカルカロドントサウルスの第2の種、C.イグイデンシス( Carcharodontosaurus iguidensis )として記載しました。ソースが見つからなかったんですが、この標本はキメラ(異なる動物の骨を1つの動物と誤認したもの)である可能性があるそうです。
▼特徴
カルカロドントサウルスの歯は非常に特徴的です。左右に薄く前後に幅広い、他の獣脚類と異なりあまりカーブしていない、他の獣脚類の歯よりもセレーションがずっと大きく縁に沿ってシワの様になっている、といった感じだそうです。
頭骨は非常に幅が狭く、上下に高さがある事が特徴で、吻部の先端に稜があり、目の上には外側に張り出した棚が見られます。長さは1.6mと推定されており、重さを軽減させる為、骨の内部には沢山の空洞があるそうです。
シュトローマー博士が記載した部分にもセレノ博士が記載した部分にも脳函が含まれていた為、脳のエンドキャストの研究も行われています。2001年にハンス・C.E.ラーソン博士によると、前脳はほぼ水平で、続く中脳は後方に45°傾斜しているそうです。さらに続く後脳は40°傾斜していて、全体的な構造はアロサウルスの脳に似ていると言います。ヒトの脳の1/15程しか容量がなく、ティラノサウルスはカルカロドントサウルスよりも1.5倍ほど脳が大きいそうです。とは言え、大型獣脚類の中では標準的な脳サイズなんだとか。
系統としては、ギガノトサウルスやマプサウルスと共にカルカロドントサウルス科に含まれます。下顎は発見されていない為か、下顎の形状が全然違う2種の復元頭骨が見られます。

1996年に発表されたモデル。下顎がアロサウルスみたいに薄いタイプ。
鼻先が長く細長い。リニューアル前の科博で展示されてました。

2010年の大阪で開催された「大恐竜博」で展示された下顎がゴツいタイプ。写真は福井県立恐竜博物館で展示されているものです。上角骨の上下の厚さが上の写真のタイプの倍はありますね。鼻先の長さも違います。
カルカロドントサウルスでは下顎のパーツが見つかっていないので、アクロカントサウルスを参考にしてるのかな?
▼生態
体長は12m~13.3m、体重は6~15t程ではないかと推定されています。足跡化石より、時速32kmで移動できたとも言います。生息していた時期は白亜紀後期セノマン期(1億~9400万年前)で、当時生活していた環境は海岸沿いのマングローブが茂る様な場所であり、スピノサウルスと生息地がカブっていました。ただ、スピノサウルスは魚食性の為、上手く棲み分けができていたと考えられています。他には大型の肉食恐竜バハリアサウルスとも生息環境を共有していた様です。こちらとは好む獲物が異なっていたのかもしれません。
当時のマングローブ環境は現在とは異なり、被子植物ではなく塩分耐性の高い木性シダ類のウェイチセリアで構成されていたといいます。ここからはティタノサウルス類の竜脚類パラリティタンが発見されています。推定で26m前後にもなる大型のカミナリ竜で、多少なりとも装甲も持っていた様ですが、カルカロドントサウルスの主な獲物ではないかとされます。
参考文献:「Dino Press Vol.5」オーロラ・オーバル社、「恐竜たちの地球」冨田幸光著 岩波新書、「恐竜2009 砂漠の奇跡」図録、「THE PRINCETON FIELD GUIDE TO DINOSAURS」Gregory S. Paul Princeton University Press、Wikipedia「Carcharodontosaurus」
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