ティラノサウルス科_ゴルゴサウルス
- 2014/11/23
- 23:05
※2016.09.10 写真と文章を追加。

ゴルゴサウルスの生体の想像図。
映画「ウォーキングwithダイナソー」の敵役として活躍したゴルゴサウルスは、カナダ地質学研究所に雇われた伝説的な化石ハンター、スターンバーグ一家の長男、チャールズ・M・スターンバーグ氏により1913年にベリー・リバー累層から発見されたティラノサウルス科の恐竜で、1914年にローレンス・モリス・ランベ博士によりゴルゴサウルス・リブラトゥス(バランスのとれた『恐ろしい』、または『怪物の様な』トカゲの意)として記載されました。この標本はNMC2120のナンバーを与えられ、カナダ自然博物館に展示されているそうです。ランベ博士はNMC2120の歯に摩耗した形跡がない事から、柔らかい食べ物、即ち腐肉を食べており、普段はほとんど動かないで寝そべっていたと推測しました。

ゴルゴサウルスの頭部のアップ。ランベ博士の想像とは異なり、恐らく素早く獰猛なハンターだったと考えられます。
1917年にはチャールズ・H・スターンバーグ氏(先述の長男の父親の方のチャールズ、ややこしいな)がレッド・ディア川の沿岸でかなり揃った化石を発掘し、アメリカ自然史博物館に売却しています。当時発見されていたティラノサウルス科の化石としては最も完全な化石で、その後何十年も最も完全なティラノサウルス科化石として知られたこの化石(AMNH5664)は、1923年にウィリアム・D・マシュー博士とバーナム・ブラウン博士によりゴルゴサウルス・ステルンベルギ(スターンバーグ一家に敬意を表して付けられた)と名付けられました。現在ではほとんどの研究者がG.ステルンベルギはG.リブラトゥスの幼体であると考えており、新参異名とされていますが、前上顎骨の歯の数が異なる、上顎骨の歯がG.ステルンベルギの方がかなり大きい等、若干の差が見られるそうで、成長による差なのか議論の余地がありそうです。

福井県立恐竜博物館が所有するゴルゴサウルスの亜成体の骨格標本。細身で足が長く、きれいな標本です。
1970年にノースカロライナ州立大学のデイル・ラッセル博士により、ゴルゴサウルス・リブラトゥスの頭骨とアルバートサウル・サルコファグスの頭骨は属を分ける程の差はないとされ、ゴルゴサウルスの名は抹消され、アルバートサウルス・リブラトゥスとされました。その後、20年程この説は受け入れられていましたが、1992年にロバート・バッカー博士はゴルゴサウルスとアルバートサウルスには明確な差異があり、やはり別属であると主張しました。最も顕著な違いは、アルバートサウルスは後頭部が広がって眼窩が前方を向いていて立体視も可能だった可能性があるのに対し、ゴルゴサウルスでは目の向きはそれ程前向きではない事とされます。また、ロイヤルティレル博物館のフィリップ・カリー博士によれば、良く似ているとされる両者にも異なる点は沢山あると言います。以下、カリー博士の論文からゴルゴサウルスとアルバートサウルスの違いを抜粋します(とは言え、英語がひどく苦手な私ですので、色々間違ってるかも…)
・ゴルゴサウルスよりもアルバートサウルスの方が全体的に骨の造りががっしりしている
・アルバートサウルスは上顎骨にゴルゴサウルスよりも深い孔を沢山持つ
・アルバートサウルスの後頭顆(頭部と頸椎がつながる部分)はゴルゴサウルスよりも腹側にあり、ティラノサウルスに近い形状
・脳幹の形状がゴルゴサウルスでは前後に長いのに対し、アルバートサウルスでは左右に広い
・鼻骨と前頭骨の縫合線がゴルゴサウルスよりもアルバートサウルスの方が複雑
などなど、私の様な素人には難しいですが、色々と細かな違いがある様です。


2016年に群馬県立自然史博物館で開催された『超肉食恐竜 T・rex』展より、上がゴルゴサウルス、下がアルバートサウルス。
正直、違いが分からないです…(;^ω^)
また、そもそも見つかっている地層が大分ずれてると言うのも見逃せないところです。ゴルゴサウルスが大体7800~7600万年前の地層から発見されているのに対し、アルバートサウルスは7200~6000万年前の地層から発見されています。少なく見積もって、ざっと400万年離れていますから別属に分類するのが妥当と思われます。

2006年に幕張メッセで開催された恐竜博に展示されたゴルゴサウルスの一種。FPDMの亜成体と比べるとガッシリしていて足も短いです。成長による変化でしょうか。
参考文献:「恐竜学最前線9」学研、「肉食恐竜辞典」グレゴリー・ポール著 河出書房新社、「新恐竜伝説」金子隆一著 早川書房、
Currie, Philip J. (2003). "Cranial anatomy of tyrannosaurids from the Late Cretaceous of Alberta" . Acta Palaeontologica Polonica 48 (2): 191–226.

ゴルゴサウルスの生体の想像図。
映画「ウォーキングwithダイナソー」の敵役として活躍したゴルゴサウルスは、カナダ地質学研究所に雇われた伝説的な化石ハンター、スターンバーグ一家の長男、チャールズ・M・スターンバーグ氏により1913年にベリー・リバー累層から発見されたティラノサウルス科の恐竜で、1914年にローレンス・モリス・ランベ博士によりゴルゴサウルス・リブラトゥス(バランスのとれた『恐ろしい』、または『怪物の様な』トカゲの意)として記載されました。この標本はNMC2120のナンバーを与えられ、カナダ自然博物館に展示されているそうです。ランベ博士はNMC2120の歯に摩耗した形跡がない事から、柔らかい食べ物、即ち腐肉を食べており、普段はほとんど動かないで寝そべっていたと推測しました。

ゴルゴサウルスの頭部のアップ。ランベ博士の想像とは異なり、恐らく素早く獰猛なハンターだったと考えられます。
1917年にはチャールズ・H・スターンバーグ氏(先述の長男の父親の方のチャールズ、ややこしいな)がレッド・ディア川の沿岸でかなり揃った化石を発掘し、アメリカ自然史博物館に売却しています。当時発見されていたティラノサウルス科の化石としては最も完全な化石で、その後何十年も最も完全なティラノサウルス科化石として知られたこの化石(AMNH5664)は、1923年にウィリアム・D・マシュー博士とバーナム・ブラウン博士によりゴルゴサウルス・ステルンベルギ(スターンバーグ一家に敬意を表して付けられた)と名付けられました。現在ではほとんどの研究者がG.ステルンベルギはG.リブラトゥスの幼体であると考えており、新参異名とされていますが、前上顎骨の歯の数が異なる、上顎骨の歯がG.ステルンベルギの方がかなり大きい等、若干の差が見られるそうで、成長による差なのか議論の余地がありそうです。

福井県立恐竜博物館が所有するゴルゴサウルスの亜成体の骨格標本。細身で足が長く、きれいな標本です。
1970年にノースカロライナ州立大学のデイル・ラッセル博士により、ゴルゴサウルス・リブラトゥスの頭骨とアルバートサウル・サルコファグスの頭骨は属を分ける程の差はないとされ、ゴルゴサウルスの名は抹消され、アルバートサウルス・リブラトゥスとされました。その後、20年程この説は受け入れられていましたが、1992年にロバート・バッカー博士はゴルゴサウルスとアルバートサウルスには明確な差異があり、やはり別属であると主張しました。最も顕著な違いは、アルバートサウルスは後頭部が広がって眼窩が前方を向いていて立体視も可能だった可能性があるのに対し、ゴルゴサウルスでは目の向きはそれ程前向きではない事とされます。また、ロイヤルティレル博物館のフィリップ・カリー博士によれば、良く似ているとされる両者にも異なる点は沢山あると言います。以下、カリー博士の論文からゴルゴサウルスとアルバートサウルスの違いを抜粋します(とは言え、英語がひどく苦手な私ですので、色々間違ってるかも…)
・ゴルゴサウルスよりもアルバートサウルスの方が全体的に骨の造りががっしりしている
・アルバートサウルスは上顎骨にゴルゴサウルスよりも深い孔を沢山持つ
・アルバートサウルスの後頭顆(頭部と頸椎がつながる部分)はゴルゴサウルスよりも腹側にあり、ティラノサウルスに近い形状
・脳幹の形状がゴルゴサウルスでは前後に長いのに対し、アルバートサウルスでは左右に広い
・鼻骨と前頭骨の縫合線がゴルゴサウルスよりもアルバートサウルスの方が複雑
などなど、私の様な素人には難しいですが、色々と細かな違いがある様です。


2016年に群馬県立自然史博物館で開催された『超肉食恐竜 T・rex』展より、上がゴルゴサウルス、下がアルバートサウルス。
正直、違いが分からないです…(;^ω^)
また、そもそも見つかっている地層が大分ずれてると言うのも見逃せないところです。ゴルゴサウルスが大体7800~7600万年前の地層から発見されているのに対し、アルバートサウルスは7200~6000万年前の地層から発見されています。少なく見積もって、ざっと400万年離れていますから別属に分類するのが妥当と思われます。

2006年に幕張メッセで開催された恐竜博に展示されたゴルゴサウルスの一種。FPDMの亜成体と比べるとガッシリしていて足も短いです。成長による変化でしょうか。
参考文献:「恐竜学最前線9」学研、「肉食恐竜辞典」グレゴリー・ポール著 河出書房新社、「新恐竜伝説」金子隆一著 早川書房、
Currie, Philip J. (2003). "Cranial anatomy of tyrannosaurids from the Late Cretaceous of Alberta" . Acta Palaeontologica Polonica 48 (2): 191–226.
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