クリオロフォサウルス_Cryolophosaurus
- 2017/05/21
- 19:33
クリオロフォサウルス(クリョロフォサウルスとも。Cryolophosaurus ellioti )は1990年~1991年に南極大陸で初めて発見された恐竜です。化石を採取したのはウィリアム・ハマー博士率いるアメリカ合衆国イリノイ州のオーガスタナ大学とオハイオ州立大学の合同チームでした。化石が見つかったのは南極点から650km程の位置にあるカークパトリック山のファーラ累層で、その場所は海抜4000m以上と言いますから、大変過酷な発掘だった様です。気温は-35℃だったと言いますんで、骨掘るだけで命がけだったんでしょう。
※恐竜学最前線ではファーラ累層から発見されたとされているが、実際にはファーラ累層より上部のハンソン累層から出たものらしい。

2009年に科博で開催された「大恐竜展 知られざる南半球の支配者」で展示されたクリオロフォサウルスの全身骨格。
下は、この骨格を元に描いた想像図。アロサウルスっぽいですね。

クリオロフォサウルスが見つかったハンソン累層は1億9千万年前~2億年前と言いますので、ジュラ紀の始まり位(シネムール期~プリンシバック期あたりか)だった様です。90~91年の発掘では、頭部の後ろ半分、頸椎、肋骨、大腿骨、骨盤の一部、尾椎等が発見され、さらに2003~2004年に追加の標本が得られたそうです。この時には胴椎、尾椎、上腕骨等が見つかり、全部合わせると、全身の50%が回収されました。
クリオロフォサウルスの最大の特徴は頭部に扇の様なトサカを持つ点です。他にも頭部にトサカを持つ獣脚類は多いですが、ほぼ鼻先から後頭部に向けて広がっていくのに対し、クリオロフォサウルスでは目の上で左右に広がるという形状をしています。他の獣脚類にはまったく見られない特徴であり、発見当時からすぐに新種と分かった様ですね。このあまりにも特徴的なトサカが「エルヴィス・プレスリーのリーゼントっぽい」と思われた様で、発見当初、「ジュラ紀のエルヴィス・プレスリー」とか、非公式に「エルヴィサウルス」とか呼ばれていたそうです。1994年に正式に記載された際には、ギリシャ語で「凍ったトサカのトカゲ」と命名されました。種小名は化石を発見したデイヴィッド・エリオット博士に献名されたものです。
クリオロフォサウルスは全長6.5m、体重450kg程と見積もられ、ジュラ紀前期から知られる獣脚類の中では最大級の捕食者だった様です。同じ発掘現場で基盤的な竜脚形類(昔で言うところの古竜脚類)が発見されており、それらを獲物としていたのではないかと推測されています。
クリオロフォサウルスは名が知られている割に分類は混乱しています。発見当初、頭骨がシンラプトルやヤンチュアノサウルス等の原始的なアロサウルス類に似ている事から、ポール・セレノ博士などはアロサウルス類であろうとしました。しかし、一緒に発見された大腿骨の特徴は原始的であり、ハマー博士の後の研究では2007年にディロフォサウルスやドラコヴェナトル等のディロフォサウルス科と密接な関係があるとされました。現在では、シノサウルスが一番近縁な種であり、最も基盤的なテタヌラ類である、という事で落ち着いた様です。

シノサウルスに近縁な基盤テタヌラ類としてのクリオロフォサウルス。こっちの方がカッコいいと思います。
※そもそもディロフォサウルス類自体、あまり分類的な位置が定まっていない様で、コエロフィシスと近縁なケラトサウルス類とされたり、いいや、最も原始的なテタヌラ類だとか言われたりして良く分からなかったんですが、2012年のマシュー・カラーノ博士の論文によると、元々”ディロフォサウルス”・シネンシスとされていたシノサウルス・トリアシクスと、本来的なディロフォサウルス・ウェテリリは見た目が似てるだけで全然別系統の恐竜であったと分かったそうです。んで、ディロフォサウルス・ウェテリリはリリエンステルヌスとかズパイサウルス等の原始的な獣脚類と近縁で、ケラトサウルス類よりも更に原始的という様な位置に来ています。逆にシノサウルスはもっと進化した動物だった様です。

恐竜王国2012で展示されたディロフォサウルスとシノサウルスの共演。
こうして並ぶと、頭骨にかなり違いがあるのが分かりますね。
その様な理由で、最初に組み立てられた復元骨格では、アロサウルスやシンラプトルに似た頭部をしていましたが、その後、若干ディロフォサウルスに寄せた別の標本が作製された様で、そちらはロイヤルオンタリオ博物館が収蔵しているそうです。
参考文献:「恐竜学最前線3、5」学研、「大恐竜展 知られざる南半球の支配者」図録、Wikipedia「Cryolophosaurus」
※恐竜学最前線ではファーラ累層から発見されたとされているが、実際にはファーラ累層より上部のハンソン累層から出たものらしい。

2009年に科博で開催された「大恐竜展 知られざる南半球の支配者」で展示されたクリオロフォサウルスの全身骨格。
下は、この骨格を元に描いた想像図。アロサウルスっぽいですね。

クリオロフォサウルスが見つかったハンソン累層は1億9千万年前~2億年前と言いますので、ジュラ紀の始まり位(シネムール期~プリンシバック期あたりか)だった様です。90~91年の発掘では、頭部の後ろ半分、頸椎、肋骨、大腿骨、骨盤の一部、尾椎等が発見され、さらに2003~2004年に追加の標本が得られたそうです。この時には胴椎、尾椎、上腕骨等が見つかり、全部合わせると、全身の50%が回収されました。
クリオロフォサウルスの最大の特徴は頭部に扇の様なトサカを持つ点です。他にも頭部にトサカを持つ獣脚類は多いですが、ほぼ鼻先から後頭部に向けて広がっていくのに対し、クリオロフォサウルスでは目の上で左右に広がるという形状をしています。他の獣脚類にはまったく見られない特徴であり、発見当時からすぐに新種と分かった様ですね。このあまりにも特徴的なトサカが「エルヴィス・プレスリーのリーゼントっぽい」と思われた様で、発見当初、「ジュラ紀のエルヴィス・プレスリー」とか、非公式に「エルヴィサウルス」とか呼ばれていたそうです。1994年に正式に記載された際には、ギリシャ語で「凍ったトサカのトカゲ」と命名されました。種小名は化石を発見したデイヴィッド・エリオット博士に献名されたものです。
クリオロフォサウルスは全長6.5m、体重450kg程と見積もられ、ジュラ紀前期から知られる獣脚類の中では最大級の捕食者だった様です。同じ発掘現場で基盤的な竜脚形類(昔で言うところの古竜脚類)が発見されており、それらを獲物としていたのではないかと推測されています。
クリオロフォサウルスは名が知られている割に分類は混乱しています。発見当初、頭骨がシンラプトルやヤンチュアノサウルス等の原始的なアロサウルス類に似ている事から、ポール・セレノ博士などはアロサウルス類であろうとしました。しかし、一緒に発見された大腿骨の特徴は原始的であり、ハマー博士の後の研究では2007年にディロフォサウルスやドラコヴェナトル等のディロフォサウルス科と密接な関係があるとされました。現在では、シノサウルスが一番近縁な種であり、最も基盤的なテタヌラ類である、という事で落ち着いた様です。

シノサウルスに近縁な基盤テタヌラ類としてのクリオロフォサウルス。こっちの方がカッコいいと思います。
※そもそもディロフォサウルス類自体、あまり分類的な位置が定まっていない様で、コエロフィシスと近縁なケラトサウルス類とされたり、いいや、最も原始的なテタヌラ類だとか言われたりして良く分からなかったんですが、2012年のマシュー・カラーノ博士の論文によると、元々”ディロフォサウルス”・シネンシスとされていたシノサウルス・トリアシクスと、本来的なディロフォサウルス・ウェテリリは見た目が似てるだけで全然別系統の恐竜であったと分かったそうです。んで、ディロフォサウルス・ウェテリリはリリエンステルヌスとかズパイサウルス等の原始的な獣脚類と近縁で、ケラトサウルス類よりも更に原始的という様な位置に来ています。逆にシノサウルスはもっと進化した動物だった様です。

恐竜王国2012で展示されたディロフォサウルスとシノサウルスの共演。
こうして並ぶと、頭骨にかなり違いがあるのが分かりますね。
その様な理由で、最初に組み立てられた復元骨格では、アロサウルスやシンラプトルに似た頭部をしていましたが、その後、若干ディロフォサウルスに寄せた別の標本が作製された様で、そちらはロイヤルオンタリオ博物館が収蔵しているそうです。
参考文献:「恐竜学最前線3、5」学研、「大恐竜展 知られざる南半球の支配者」図録、Wikipedia「Cryolophosaurus」
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