幻獣の名を冠する恐竜シリーズ24 タロス
- 2017/05/27
- 23:57
タロス・サンプソニ( Talos sampsoni )はアメリカ合衆国ユタ州のグランド ステアーケース=エスカランテ国定公園から採取された化石UMNH VP 19479に基づいて2011年にリンゼイ・ザノ博士らにより記載されたトロオドン科の恐竜です。エスカランテ国定公園では2000年からユタ大学によるカイパロウィッツ累層の発掘が進められていますが、タロスは2008年に発見されたそうです。カイパロウィッツ累層のほぼ真ん中あたりから発見され、生息していた年代は後期白亜紀カンパン期、約7600万年前頃との事です。
タロスの名前はギリシャ神話に登場する翼を持つ青銅製の巨人タロスに由来します。また英語で「猛禽類の鋭い鉤爪」を意味するタロン(Talon)ともかけてあるという事です。種小名は、カイパロウィッツ累層の発掘プロジェクトを長年牽引してきたスコット・サンプソン博士に献名されたものです。

タロスの想像図。頭部の要素は見つかっていないので、完全な想像です。
カイパロウィッツ累層では、角竜のユタケラトプス、コスモケラトプス、カモノハシ恐竜のグリポサウルス、ティラノサウルス類のテラトフォネウス、オヴィラプトロサウルス類のハグリフスなど、10種の恐竜が知られていますが、タロスの発見により更にその生物相の多様性が証明されたと言います。
トロオドン科はその殆どがアジアから知られ、北米の化石記録は貧弱でした。北米から知られるトロオドン科の恐竜はトロオドン・フォルモスス( Troodon formosus )、トロオドン・インエクアリス( Troodon inequalis )、ジェミニラプトル・スアレザルム( Geminiraptor suarezarum )、ペクティノドン・バッケリ( Pectinodon bakkeri )、コパリオン・ドウグラッシ( Koparion douglassi )等がありますが、中には歯しか知られていないものもあるそうです。ジュラ紀後期のモリソン層からもトロオドン類らしき化石が見つかっていると言いますが、タロスはそうした時間的空隙を埋める発見なのだそうです。トロオドン・フォルモススは年代的には2000万年、距離的には4000kmもの範囲で発見されているそうですが、そのほとんどは歯のみに基づいており、それら全てがトロオドン属に属していると言うのは無理があるので、タロスの発見により色々なトロオドン類が北米に生息していた事が推測されると言う事の様です。
系統解析の結果、タロスはトロオドン科の中でもトロオドン、サウロルニトイデス、ザナバザル等を含む最も派生的なグループに属しているそうです。

タロスに近縁とされるザナバザル( Zanabazar junior )の頭骨。神流町恐竜センターに展示されているもの。
タロスのホロタイプUMNH VP 19479には数個の背骨、左尺骨、骨盤、左脚のほぼ全て、右脚の一部、数個の血道弓、1個の尾椎が含まれます。これらから推定されるタロスの体長は約2m、体重は約38kgと推定されます。タロスは見つかっている部分が部分的であるので、固有の形質はほぼ後ろ足の特徴に基づいていますが、それでも同じく北米から見つかっているトロオドン科のトロオドン・フォルモスス( Troodon formosus )とは色々と相違点がある様です。
◆ 距骨(人間の足首にある骨)の上の面に窪みがあるが、トロオドン・フォルモススと比べると発達が弱い
◆ 距骨後方の突起(外側顆と内側顆)の高さがタロスではほぼ同じだが、トロオドン・フォルモススでは
内側顆の方が突き出ている
◆ タロスの距骨は顆間窩がV字に切れ込むが、トロオドン・フォルモススではほぼ水平である
◆ 中足骨(人間で言う足の甲の骨)がトロオドン・フォルモススに比べて有意に細長い
と言った点がタロスの固有の特徴とされます。
タロスの標本はオハイオ大学で、マイクロCTスキャナーで検査されました。その結果、左足の第2指の根元側の指に病変が見られたそうです。かなりひどい感染症に罹っていた様で、左足全体の動きに影響が出る程のものだったのではないかと言います。
また、タロスは死亡した時の年齢の推定が行われており、4~6歳で死亡したと考えられています。

トロオドン科としては珍しい全身骨格。シノヴェナトル( Sinovenator changii )。
2017年度の福井県立恐竜博物館の特別展ではトロオドンの全身骨格が展示される様なので、今から楽しみです(^◇^)
参考文献:Lindsay E. Zanno, David J. Varricchio, Patrick M. O'Connor, Alan L. Titus and Michael J. Knell (2011). "A new troodontid theropod, Talos sampsoni gen. et sp. nov., from the Upper Cretaceous Western Interior Basin of North America". PLoS ONE. 6 (9): e24487.
タロスの名前はギリシャ神話に登場する翼を持つ青銅製の巨人タロスに由来します。また英語で「猛禽類の鋭い鉤爪」を意味するタロン(Talon)ともかけてあるという事です。種小名は、カイパロウィッツ累層の発掘プロジェクトを長年牽引してきたスコット・サンプソン博士に献名されたものです。

タロスの想像図。頭部の要素は見つかっていないので、完全な想像です。
カイパロウィッツ累層では、角竜のユタケラトプス、コスモケラトプス、カモノハシ恐竜のグリポサウルス、ティラノサウルス類のテラトフォネウス、オヴィラプトロサウルス類のハグリフスなど、10種の恐竜が知られていますが、タロスの発見により更にその生物相の多様性が証明されたと言います。
トロオドン科はその殆どがアジアから知られ、北米の化石記録は貧弱でした。北米から知られるトロオドン科の恐竜はトロオドン・フォルモスス( Troodon formosus )、トロオドン・インエクアリス( Troodon inequalis )、ジェミニラプトル・スアレザルム( Geminiraptor suarezarum )、ペクティノドン・バッケリ( Pectinodon bakkeri )、コパリオン・ドウグラッシ( Koparion douglassi )等がありますが、中には歯しか知られていないものもあるそうです。ジュラ紀後期のモリソン層からもトロオドン類らしき化石が見つかっていると言いますが、タロスはそうした時間的空隙を埋める発見なのだそうです。トロオドン・フォルモススは年代的には2000万年、距離的には4000kmもの範囲で発見されているそうですが、そのほとんどは歯のみに基づいており、それら全てがトロオドン属に属していると言うのは無理があるので、タロスの発見により色々なトロオドン類が北米に生息していた事が推測されると言う事の様です。
系統解析の結果、タロスはトロオドン科の中でもトロオドン、サウロルニトイデス、ザナバザル等を含む最も派生的なグループに属しているそうです。

タロスに近縁とされるザナバザル( Zanabazar junior )の頭骨。神流町恐竜センターに展示されているもの。
タロスのホロタイプUMNH VP 19479には数個の背骨、左尺骨、骨盤、左脚のほぼ全て、右脚の一部、数個の血道弓、1個の尾椎が含まれます。これらから推定されるタロスの体長は約2m、体重は約38kgと推定されます。タロスは見つかっている部分が部分的であるので、固有の形質はほぼ後ろ足の特徴に基づいていますが、それでも同じく北米から見つかっているトロオドン科のトロオドン・フォルモスス( Troodon formosus )とは色々と相違点がある様です。
◆ 距骨(人間の足首にある骨)の上の面に窪みがあるが、トロオドン・フォルモススと比べると発達が弱い
◆ 距骨後方の突起(外側顆と内側顆)の高さがタロスではほぼ同じだが、トロオドン・フォルモススでは
内側顆の方が突き出ている
◆ タロスの距骨は顆間窩がV字に切れ込むが、トロオドン・フォルモススではほぼ水平である
◆ 中足骨(人間で言う足の甲の骨)がトロオドン・フォルモススに比べて有意に細長い
と言った点がタロスの固有の特徴とされます。
タロスの標本はオハイオ大学で、マイクロCTスキャナーで検査されました。その結果、左足の第2指の根元側の指に病変が見られたそうです。かなりひどい感染症に罹っていた様で、左足全体の動きに影響が出る程のものだったのではないかと言います。
また、タロスは死亡した時の年齢の推定が行われており、4~6歳で死亡したと考えられています。

トロオドン科としては珍しい全身骨格。シノヴェナトル( Sinovenator changii )。
2017年度の福井県立恐竜博物館の特別展ではトロオドンの全身骨格が展示される様なので、今から楽しみです(^◇^)
参考文献:Lindsay E. Zanno, David J. Varricchio, Patrick M. O'Connor, Alan L. Titus and Michael J. Knell (2011). "A new troodontid theropod, Talos sampsoni gen. et sp. nov., from the Upper Cretaceous Western Interior Basin of North America". PLoS ONE. 6 (9): e24487.
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