ティラノサウルス科_ティラノサウルス(1) 発見と命名
- 2014/10/14
- 21:14

ティラノサウルス( Tyrannosaurus rex )は1902年にモンタナ州で発見された化石に基づき、アメリカ自然史博物館のヘンリー・フェアフィールド・オズボーン博士により1905年に記載された肉食恐竜です。この時に見つかったのは、下顎、少しの背骨と肋骨、骨盤、後足の一部等で、オズボーン博士はこの肉食恐竜の大きさに驚き、「暴君トカゲの王」と言う意味の名前を与えました。
実は、ティラノサウルスの化石は、先に書いた1902年より前に既に見つかっていたそうです。ティラノサウルスの最も古い記録は、1892年にアメリカの古生物学者、エドワード・ドリンカー・コープ博士が記載した、サウスダコタ州で発見された大きく内部がスカスカに軽量化された頸椎骨2個とされています。コープ博士はこの標本にマノスポンディルス・ギガス(巨大な含気椎骨の意味)と名付けました。オズボーン博士はマノスポンディルスの背骨の特徴がティラノサウルスと同じである事に気付いていたそうですが、まったく同じ動物である、とは断言しなかったようです。
1900年にはワイオミング州で伝説の化石ハンター、バーナム・ブラウン氏によって2番目の化石が発見され、これにはオズボーン博士によって1905年にディナモサウルス・インペリオスス(皇帝の強力なトカゲの意味)の名前が与えられました。オズボーン博士はこの化石がティラノサウルスとそっくりである事に気付いていましたが、鎧竜の様な骨の鎧が化石に混じっていた為、別の恐竜であると考えました。
が、翌年には「やっぱり鎧竜の化石が混じってしまったティラノサウルスの化石だった」と訂正してしまいました。ちなみに、ディナモサウルスはティラノサウルスと同じ論文で記載されたのですが、ティラノサウルスの方が1ページ早く書かれていたそうです。
ということで、ティラノサウルスの名前の元になった化石は3番目に見つかったものなのです。

動物の学名は、1番最初に付けられたものに優先権がある、というのが国際動物命名規約で決められています。もしマノスポンディルスがティラノサウルスと同じ動物だったら、マノスポンディルスが有効な名前で、ティラノサウルスの名前は消えてしまう事になります。
2000年6月にマノスポンディルスが発見された場所でティラノサウルスの化石が見つかり、マノスポンディルスとティラノサウルスが同一の恐竜である事が判明しました。ところが、2000年1月に国際動物命名規約が改定されており、「動物命名法国際審議会が認めた場合のみ特例措置をとる」事ができる様になっていました。ティラノサウルスは恐らく世界で1番有名な恐竜でしょうから、これがマノスポンディルスなんて聞いた事もない名前になってしまっては、世界中の図鑑を改版しなければならなくなります。この為、特例措置が取られ、ティラノサウルスの名前が有効名として残る事になったのです。あと、ディナモサウルスについては、1ページとは言えティラノサウルスの方が早く出ていたので、ティラノサウルスに優先権があった様です。
この他にも、ナノティランヌス、デイノティランヌス、スティギヴェナトルという3種の恐竜がティラノサウルスの新参異名(同じ動物に後から付けられた名前、無効名)とされています。ただし、ナノティランヌスについては恐らく別の属と考えられますので、いずれ紹介したいと思います。デイノティランヌスとスティギヴェナトルは子供のティラノサウルスを別の恐竜としてしまったものだそうです。
参考文献:「大恐竜 T・レックス新発見」 ジョン・R・ホーナー/ドン・レッセム著 二見書房、「Sue スー 史上最大のティラノサウルス発掘」 ピーター・ラーソン/クリスティン・ドナン著 朝日新聞社、 「恐竜学最前線1~12」 学研
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