ドロマエオサウルス類の中でもメジャーなヴェロキラプトル亜科を紹介します。
ヴェロキラプトル・モンゴリエンシス(
Velociraptor mongoliensis )

体長:2m 体重:15kg 名前の意味:属名「 (ラテン語で)素早い泥棒」、種小名「モンゴル産の」
発見地:モンゴル国ウムノゴビ県 発見地層: Djadochta 累層(白亜紀後期カンパン期約8000万年前)
特徴:ホロタイプAMNH 6515は1923年にアンドリュース隊によるモンゴル遠征によって発見され、ヘンリー・フェアフィールド・オズボーン博士によって1924年に記載された。複数の化石が発見されているが、中でも1971年にポーランド・モンゴル合同調査隊によって発見されたGIN 100/25、通称「闘争化石」はその保存状態の良さとヴェロキラプトルの生態を示す化石として特に重要である。基盤的な角竜であるプロトケラトプスと格闘している状態で化石化しており、プロトケラトプスはヴェロキラプトルの左前脚に噛みつき、ヴェロキラプトルは右前脚でプロトケラトプスのフリルを掴んで右後脚の第2趾を首に蹴り込んだ状態である。

この化石の発見により、ヴェロキラプトルが生きている獲物を狩っていた事が証明された。一説にはドロマエオサウルス類の後脚の第2趾は肉を切り裂く事はできなかったので、頸動脈を狙って突き刺したのではないかと言われている。この2頭が闘っていた瞬間が化石化した要因としては砂嵐や砂丘が崩れた等の原因が考えられているが、いずれにしても速やかに埋没した事は間違いないという。さらに日本の林原自然史博物館とモンゴルの合同調査隊が発見した個体の腹部からは翼竜のものと思われる化石が見つかっており、ヴェロキラプトルは翼竜も捕食した可能性がある。
ヴェロキラプトルの特徴としては、外鼻孔と上顎骨の間に前上顎骨の長い突起がある事、頭骨の眼窩より前部分が上下に低く上側が弱く凹んでいる事、前眼窩窓と第2前眼窩窓が大きい事等が挙げられる。

V.モンゴリエンシスの化石からは羽毛の痕跡は発見されていないが、近縁の恐竜達(ミクロラプトル等)が羽毛で覆われていた事から、ヴェロキラプトルも羽毛を持っていたと推測されていた。1999年に中国・ベルギー合同調査隊が発見したヴェロキラプトルの化石からは、前脚の骨に風切り羽根の痕跡である乳頭突起が発見された為、ヴェロキラプトルが前脚に翼を持っていた事が証明された。この個体は、2008年にベルギーの古生物学者パスカル・ゴドフロワ博士によって、V.オスモルスカエとして命名された。この種小名はモンゴルの恐竜研究に貢献したポーランドの古生物学者、ハルツカ・オスモルスカ博士への献名である。因みに、つい最近、前肢がペンギンの様に縮小し、魚を食べていた可能性のあるドロマエオサウルス類が記載され、ハルシュカラプトル・エスクイリエイ_
Halszkaraptor escuillieiと命名された。これもオスモルスカ博士への献名である。
やはり、ドロマエオサウルス類の中でも最も有名な属でしょう。映画ジュラシックパークでは、原作者のマイクル・クライトン氏がG.ポール博士の説「ヴェロキラプトル=デイノニクス」を採用した為、細長い顔に復元されませんでしたね。
ツァーガン・マンガス(
Tsaagan mangas )

体長:2m 体重:15kg 名前の意味:属名「 (モンゴル語で)白い」、種小名「(モンゴル語で)怪物」
発見地:モンゴル国ウムノゴビ県 発見地層: Djadochta 累層(白亜紀後期カンパン期約7500万年前)
特徴:ホロタイプIGM 100/1015は1996年に発見され、当初はヴェロキラプトルの標本とされた。ほぼ完全な頭骨、10個の頸椎、及び不完全な左の肩甲骨からなるが、これが現在知られているツァーガンの唯一の標本である。ツァーガンが発見されたのはモンゴルのウハー・トルゴット地方であるが、この地域から発見された唯一の確実なドロマエオサウルス類だという。地層的にはヴェロキラプトルと同じ地層から発見されている。1998年にCTスキャンを用いた研究によりヴェロキラプトルとは細かな部分で違いが見られた。ヴェロキラプトルとの差は頭骨の上部がより堅牢で真っ直ぐな点、第2前眼窩窓の位置が異なる点、後耳骨( paroccipital processes )と基翼状骨( basipterygoid )が長い点、頬骨( jugal )が鱗状骨( squamosal )と接する点等があるという。この事から2006年にマーク・ノレル博士らによりツァーガン・マンガスと命名された。この名前は、属名と種小名を合わせてモンゴル語で「白い怪物」という意味だそうであるが、「白い」はツァーガン(Tsaagan)ではなくツァガーン(Tsagaan)が正しいとの事で、記載論文でスペルが誤ったまま記載されてしまったそうである。

ちょいちょい日本国内で展示されるヴェロキラプトルの全身骨格は、実はツァーガンなのだそうです。上の写真は2009年の恐竜博で展示された物ですが、良く見ると、頭骨の第2前眼窩窓の位置がヴェロキラプトルと違います。
リンヘラプトル・エクスクイシトゥス(
Linheraptor exquisitus )

体長:1.8m 体重:15kg 名前の意味:属名「臨河(発見地)の(ラテン語で)泥棒」、種小名「(ラテン語で)絶妙な」
発見地:中華人民共和国内モンゴル自治区巴音満達呼(バインマンダフ) 発見地層: 烏梁素海(Wulansuhai )累層(白亜紀後期カンパン期約7500万~8400万年前)
特徴:ホロタイプIVPP V 16923は2008年に発見されたほぼ完全に保存された化石である。2010年に除星博士らによって記載されたが、種小名は化石の保存状態が非常に素晴らしい事から付けられた。

化石が発見された烏梁素海(Wulansuhai )累層はモンゴルに見られるDjadochta 累層とほぼ同じ時代のものとされる。系統解析の結果、ツァーガン(
Tsaagan mangas )と共有する形質が多く非常に近縁である事が分かった。リンヘラプトルとツァーガンに共通する特徴としては、第2前眼窩窓が他のドロマエオサウルス類よりも大きく発達している点があるという。

この2種はドロマエオサウルス類の中で基盤的な属と派生的な属の中間的な形質を示し、ドロマエオサウルス類の進化を探る上で非常に重要な存在だそうである。しかしながら、リンヘラプトルとツァーガンの間の細かな差異については、2012年のターナー博士らによるレビューで個体差の範囲であり、リンヘラプトルとツァーガンは同じ動物であるとされた。
最後にヴェロキラプトルとリンヘラプトル(ツァーガン?)の目立つ違いを。

第2前眼窩窓の位置が若干違いますね。ヴェロキラプトルでは前眼窩窓の前の平らな面に開口していますが、リンヘラプトル(ツァーガンも)では鼻骨と接する様に開口しています。これが一番分かりやすい違いみたいです。
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