ティラノサウルス科_ティラノサウルス(2) スーの物語

　「スー」と名付けられたティラノサウルスをご存じでしょうか。

　1990年にサウスダコタ州で発見された最大(全長12.8m)で最高(全身の90%以上が揃っている)のティラノサウルス･レックスの化石です。有名なオークションハウスのサザビーで10億円という前代未聞の金額で落札された事も有名かと思います。



　「スー」という愛称は、ブラックヒルズ地質学研究所という民間の化石業者と一緒に化石を探していたアマチュアの化石愛好家でプロのダイバーでもあるスーザン･ヘンドリクソン女史が見つけた事に由来しています。
　しかし、スーとその発掘を行ったブラックヒルズ研究所社長のピーター･ラーソン氏にとんでもない事態が降りかかる事になりました。
　ラーソン氏はスーを発掘する為に発見場所を所有していた牧場主にお金をちゃんと払っていたのですが、この牧場主にスーを1億円で買うと持ち掛けた個人コレクターがいて、牧場主はスーが不当に持ち出されたとごね始めたのです。また、牧場主の土地はアメリカに信託されていた事から、スーはアメリカ合衆国のものである、という事になりFBIによって押収されてしまいました。さらに、スーが発見された土地には、ネイティブアメリカンのスー族の居留地でもあった為、スーを巡る所有権争いに絡んでくるというカオスな状態となりました。

　結局、ピーター･ラーソン氏は裁判に負けて実刑を受けて収監されてしまい、スーはサザビーでオークションにかけられる事になりました。10億円という値段は本当に科学的な価値にのみ付けられたものではないと思います。それでも、シカゴのフィールド博物館というまともな組織が買い取った事は不幸中の幸いと言えるかもしれません。しかし、博物館にそんなお金はありません。出資してくれた企業があったのです。なんと、マクドナルドとディズニー!!たまには行って貢献しないとなぁ、思います。




参考文献：「Sue スー　史上最大のティラノサウルス発掘」　ピーター･ラーソン/クリスティン･ドナン著　朝日新聞社、「恐竜学最前線2」学研、