幻獣の名を冠する恐竜シリーズ3 マハカラ
- 2015/02/08
- 00:27

マハカラ・オムノゴヴァエ(Mahakala omnogovae)はモンゴル,ウムヌゴビ県のジャドクタ累層(カンパン期、約8000万年前)から発見された基盤的なドロマエオサウルス類で、2007年にアメリカ自然史博物館のアラン・ターナー博士らによって記載されました。
発見されている部位は後頭部の一部、肩甲骨、上腕骨など腕の一部、ほぼ完全な両足、腸骨、尾骨の前半などで、まあまあ揃っている感じ。標本番号はIGM 100/1033とナンバリングされています。体長は70cmと見積もられており、このサイズでも大人に近い年齢だったとされています。骨格に見られる特徴には、原始的なトロオドン類や鳥類と共通する点があると言います。
【頭頂骨は、他のドロマエオサウルス類と異なり上下方向にアーチ状で、トロオドン類のシノヴェナトルやメイに似ている】、【方形骨の形状が他のドロマエオサウルス類と異なり、単頭ボール状突起ではない】、【脳幹の側壁は良く発達しており、トロオドン類に似る】等です。
マハカラは後期白亜紀から発見されていますが、ドロマエオサウルス類としてはかなり原始的で、サイズも小さく、前脚がドロマエオサウルス類としてはかなり短いのが特徴の一つです。
原始的と考えられるマハカラは体サイズが小さく、始祖鳥の様な初期の鳥類と大きさが同じ位です。鳥類は進化するにつれて体が小さくなっていきますが、ドロマエオサウルス類、トロオドン類は大きくなっていきました。この事から、ターナー博士らは獣脚類が小型化し鳥類に進化したという単純なシナリオではなく、鳥類、ドロマエオサウルス類、トロオドン類で個別に小型化する試みがなされたのではないかと推測しています。
さて、マハカラという名は、チベット密教の神である「マハーカーラ」から付けられたとされます。元をただすと、マハーカーラはインドのヒンドゥー神話の神で、最高神の1柱であるシヴァ神の化身というのが定説です。マハー=偉大、カーラ=黒、暗黒、時間といった意味があり、厨二病っぽく訳すと、【偉大なる暗黒の王】とかそんな感じでしょうか。後に仏教に取り込まれ、憤怒の形相で仏敵を調伏する神となりました。
中国に仏教が伝わった際、各仏に漢字が当てられたワケですが、この時マハーカーラは大黒天(天というのは、仏教に帰依した他教の神を指しているそうです)とされました。日本では、江戸時代に神道の神様である大国主命(出雲大社の主神、因幡の白兎で、皮を剥がれたウサギを助けるエピソードが有名)と同一視され習合していきました。これは、大黒天の読み方が「ダイコク」で、大国主命の「大国」も音読みすると「ダイコク」になる為とされています。
一説には、チベット密教や日本の密教でのマハーカーラの仏像・仏画でシヴァ神とその妃を踏みつけていることから、元ヒンドゥー教の神ではなく、仏教側が最大の仏敵シヴァを倒す為に生み出した神格ではないかとされ、シヴァを倒した際に、その破壊神としての一面を引き継いでマハーカーラを名乗ったと考えられるそうです。
マハカラ・オムノゴヴァエについては、何を根拠に「マハーカーラ」と関連付けたのかわかりませんでした。記載論文にもその辺は書いてないです。思い付き…なんでしょうか。
参考文献:Turner, Alan H.; Pol, Diego; Clarke, Julia A.; Erickson, Gregory M.; and Norell, Mark (2007). "A basal dromaeosaurid and size evolution preceding avian flight" . Science 317 (5843): 1378–1381.
大畠洋一氏のホームページより:マハーカーラ論 (大黒神の起源)
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