ティラノサウルス科_ティラノサウルス(4) 小さな前あしの使い方
- 2014/10/19
- 01:02
ティラノサウルスはこれまで地上に現れた肉食動物の中で最大級の生き物で、まさしく怪物と呼ぶに相応しい存在です。しかし、漫画のキャラクター等で子供に親しまれるのは、その前あしがあまりにも小さく2本しか指がない事から、一種ユーモラスな感覚を覚えるからかもしれません。
※実は人で言う手の甲の骨(中手骨)は3本あります。

ティラノサウルスの前あし。丸で囲った骨が3本目の中手骨。
古い図鑑等を見ると、ティラノサウルスの前あしは小さ過ぎて何の役にも立たなかった、とか、せいぜい爪楊枝の代わりに歯に詰まった肉の破片をシーシーしたとか、大人なら腕相撲で勝てるとか書いてあったりします。けれどこれらは全て誤りです。ティラノサウルスの前あしは、全長から見ると確かに小さいですが、12m級の個体なら長さ約90cmあり、成人の足と同じくらいあります。その上、骨は人の足くらいの太さがある訳で、そこに太い筋肉が付着している以上、発揮できる力は人間の足よりも強かったはずです。デンバー自然科学博物館のケネス・カーペンター博士は片腕で180kgくらいの物を持ち上げられたと試算しています。両腕なら300kg以上の物を持ち上げられただろうと言いますから、かなり力があったようです。ちなみに、ティラノサウルスは体型からどう足掻いても前あしが顎に届かないので爪楊枝の代わりに使用した、なんて事はあり得ません。
では、ティラノサウルスの非常に小さな前あしはどんな使われ方をしていたのでしょうか。
1つ目の仮説は狩りを行なう際、暴れる獲物を抑え込むのに使用したというもの。ティラノサウルスを記載したオズボーン博士などがこう考えたのですが、ジョン・ホーナー博士は腕で獲物を抑えると不自然に頭部を後ろに反らさないと噛みつけないので、あり得ないと思うとしています。
2つ目の仮説は、交尾の際にのしかかるオスはメスを掴む為に使用し、メスは体を支える為に腕を突っ張り棒代わりに使用したというもの。これについては、ティラノサウルスの交尾方法が化石から推定する事が難しい為、特に肯定も否定も聞いた事がないです。
3つ目の仮説は、ティラノサウルスが寝ている姿から立ち上がる際に支点として使用したというもの。オレゴン大学のケント・スティーブンス博士がコンピュータを用いてティラノサウルスが立ち上がる時の動きを解析して提唱した仮説です。この仮説を補強する証拠の1つにティラノサウルスの叉骨に骨折が見られる事が挙げられるそうです。叉骨は人で言う鎖骨が融合した骨で、鳥と恐竜に見られます。肩甲烏口骨をつなぐ位置にあり、これまでに5体のティラノサウルスで見つかっていますが、内3体に骨折の痕があったと言います。なぜ60%も叉骨が折れたのでしょうか。
ケント・スティーブンス博士のコンピュータシミュレーションでは、ティラノサウルスが休む時は恥骨を接地させて足を曲げて座り込む様にしたとされます。

この時、頭も地面まで下げたとすると、頭が重すぎる為、後足の力だけでは立ち上がることができないので、前あしでちょっと反動をつけて立ち上がったとされました。そして、この時に前あしにかかる荷重がかなりの負担となり、ティラノサウルスの叉骨は骨折しやすかったのではないかと考えられています。
参考文献:「大恐竜 T・レックス新発見」 ジョン・R・ホーナー/ドン・レッセム著 二見書房、「恐竜博2011」図録
※実は人で言う手の甲の骨(中手骨)は3本あります。

ティラノサウルスの前あし。丸で囲った骨が3本目の中手骨。
古い図鑑等を見ると、ティラノサウルスの前あしは小さ過ぎて何の役にも立たなかった、とか、せいぜい爪楊枝の代わりに歯に詰まった肉の破片をシーシーしたとか、大人なら腕相撲で勝てるとか書いてあったりします。けれどこれらは全て誤りです。ティラノサウルスの前あしは、全長から見ると確かに小さいですが、12m級の個体なら長さ約90cmあり、成人の足と同じくらいあります。その上、骨は人の足くらいの太さがある訳で、そこに太い筋肉が付着している以上、発揮できる力は人間の足よりも強かったはずです。デンバー自然科学博物館のケネス・カーペンター博士は片腕で180kgくらいの物を持ち上げられたと試算しています。両腕なら300kg以上の物を持ち上げられただろうと言いますから、かなり力があったようです。ちなみに、ティラノサウルスは体型からどう足掻いても前あしが顎に届かないので爪楊枝の代わりに使用した、なんて事はあり得ません。
では、ティラノサウルスの非常に小さな前あしはどんな使われ方をしていたのでしょうか。
1つ目の仮説は狩りを行なう際、暴れる獲物を抑え込むのに使用したというもの。ティラノサウルスを記載したオズボーン博士などがこう考えたのですが、ジョン・ホーナー博士は腕で獲物を抑えると不自然に頭部を後ろに反らさないと噛みつけないので、あり得ないと思うとしています。
2つ目の仮説は、交尾の際にのしかかるオスはメスを掴む為に使用し、メスは体を支える為に腕を突っ張り棒代わりに使用したというもの。これについては、ティラノサウルスの交尾方法が化石から推定する事が難しい為、特に肯定も否定も聞いた事がないです。
3つ目の仮説は、ティラノサウルスが寝ている姿から立ち上がる際に支点として使用したというもの。オレゴン大学のケント・スティーブンス博士がコンピュータを用いてティラノサウルスが立ち上がる時の動きを解析して提唱した仮説です。この仮説を補強する証拠の1つにティラノサウルスの叉骨に骨折が見られる事が挙げられるそうです。叉骨は人で言う鎖骨が融合した骨で、鳥と恐竜に見られます。肩甲烏口骨をつなぐ位置にあり、これまでに5体のティラノサウルスで見つかっていますが、内3体に骨折の痕があったと言います。なぜ60%も叉骨が折れたのでしょうか。
ケント・スティーブンス博士のコンピュータシミュレーションでは、ティラノサウルスが休む時は恥骨を接地させて足を曲げて座り込む様にしたとされます。

この時、頭も地面まで下げたとすると、頭が重すぎる為、後足の力だけでは立ち上がることができないので、前あしでちょっと反動をつけて立ち上がったとされました。そして、この時に前あしにかかる荷重がかなりの負担となり、ティラノサウルスの叉骨は骨折しやすかったのではないかと考えられています。
参考文献:「大恐竜 T・レックス新発見」 ジョン・R・ホーナー/ドン・レッセム著 二見書房、「恐竜博2011」図録
スポンサーサイト