アロサウルス上科について(1)
- 2015/04/22
- 01:42
最近、カルノサウルス類の再編が凄い早さで行われていて、気になります。 その辺の流れを日本語で読める本が無いので、自分でメモ書き程度にまとめてみようかと。
アロサウルス上科とは、1878年にオスニエル・チャールズ・マーシュ博士により創設された分類単位です。80年代から90年代の本を見ると、大ざっぱにアロサウルスとこれに類する肉食恐竜がぶち込まれていました(さらに前の時代には、体のサイズが大きいという理由だけでカルノサウルス下目メガロサウルス科にほとんどの獣脚類がぶち込まれるという悲惨な時代もあった様です)。

FPDMに展示されているアロサウルス。AMNH5753のレプリカ。
例として、1988年に出版されたグレゴリー・ポール博士の「PREDATORY DIOSAURS OF THE WORLD」(邦題:肉食恐竜辞典)の“アロサウルス科”に含まれる属を見てみます。ここでのアロサウルス科は鳥獣脚類(アヴェテロポーダ)という鳥に近付いた派生的な獣脚類の一系統という扱いです。
プロケラトサウルス、オルニトレステス、ラパトル、アロサウルス、キランタイサウルス、
アクロカントサウルス、インドサウルス、ラボカニア、エレクトプス、カルカロドントサウルス、
バハリアサウルス
生息時期、発見地域、体サイズ等、かなりバラバラな恐竜がアロサウルス科とされています。現在では、赤字で示した属はティラノサウルス類、青字で示した属はアベリサウルス類と考えられています。
また、「恐竜データブック」という別の本には、スゼチュアノサウルス、ストケソサウルス、ピアトニツキサウルスがアロサウルス科とされていますが、スゼチュアノサウルス属は消滅、ストケソサウルスはティラノサウルス類に、ピアトニツキサウルスはメガロサウルス類になっています。
そもそも上記の属は、そのほとんどが断片的な化石に基づいてしか知られていなかったので、この様に雑駁な分類しかできない状況だったと思われます。
その後、アロサウルス上科は1998年にシカゴ大学のポール・セレノ博士により、「現生鳥類よりもアロサウルス側により近い共通祖先を持つグループ」と定義されました。系統解析も進められ、アロサウルス上科は幾つかのグループを内包する大きな系統であった事がわかってきています。属、種の再検討も進んできたおかげか、今までアロサウルス科として分類されていたものが独立して他の科となったり、全然別の系統に含まれたりと、この辺の流れが日本語で詳しく読める資料が中々ないのが大変です。
下に示す系統樹はテキサス大学のドリュー・エディー博士、アメリカ自然史博物館のジュリア・クラーク博士によるアクロカントサウルスの論文から引用したものです。

これを見ると、最も基盤的な種類の内モンゴルで見つかったモノロフォサウルスを除くとアロサウルス上科には4つの大きな系統があった事がわかります。
■ジュラ紀中期頃に中国やモンゴルに生息していた原始的なシンラプトル類
(シンラプトル、ヤンチュアノサウルスなど)
■ジュラ紀後期に北米及びヨーロッパ(アフリカも?)に生息していたアロサウルス類
(アロサウルス、サウロファガナクスなど)、
■白亜紀前期にほぼ世界中に生息していたネオヴェナトル類
(ネオヴェナトル、シアッツ、フクイラプトル、メガラプトルなど)
■白亜紀前期から後期にかけて南米及びアフリカをメインに生息していたカルカロドントサウルス類
(カルカロドントサウルス、ギガノトサウルスなど)
シンラプトル科は2005年にポール・セレノ博士によって設けられた科ですが、現在はメトリアカントサウルス科と名称が変更になっています。
また、ネオヴェナトル科の中でもメガラプトルやフクイラプトル等の中型のものがメガラプトラ(メガラプトル類)としてまとめられていますが、これらはもしかするとティラノサウルス類である可能性が指摘されています。
次回からは、それぞれのグループのメンバー達のレビューが始まるよ(やるとは言ってない
参考文献:「肉食恐竜辞典」グレゴリー・ポール著 河出書房新、恐竜データブック」デヴィッド・ランバート&ダイアグラム・グループ著 大日本絵画、「最新恐竜辞典-分類・生態・謎・情報収集-」金子隆一編 朝日新聞社、「恐竜の世界」金子隆一著 新星出版社
Eddy, Drew R.; Clarke, Julia A. (2011). Farke, Andrew, ed. "New Information on the Cranial Anatomy of Acrocanthosaurus atokensis and Its Implications for the Phylogeny of Allosauroidea (Dinosauria: Theropoda)". PLoS ONE 6 (3): e17932. Bibcode:2011PLoSO...6E7932E. doi:10.1371/journal.pone.0017932. PMC 3061882. PMID 21445312.
アロサウルス上科とは、1878年にオスニエル・チャールズ・マーシュ博士により創設された分類単位です。80年代から90年代の本を見ると、大ざっぱにアロサウルスとこれに類する肉食恐竜がぶち込まれていました(さらに前の時代には、体のサイズが大きいという理由だけでカルノサウルス下目メガロサウルス科にほとんどの獣脚類がぶち込まれるという悲惨な時代もあった様です)。

FPDMに展示されているアロサウルス。AMNH5753のレプリカ。
例として、1988年に出版されたグレゴリー・ポール博士の「PREDATORY DIOSAURS OF THE WORLD」(邦題:肉食恐竜辞典)の“アロサウルス科”に含まれる属を見てみます。ここでのアロサウルス科は鳥獣脚類(アヴェテロポーダ)という鳥に近付いた派生的な獣脚類の一系統という扱いです。
プロケラトサウルス、オルニトレステス、ラパトル、アロサウルス、キランタイサウルス、
アクロカントサウルス、インドサウルス、ラボカニア、エレクトプス、カルカロドントサウルス、
バハリアサウルス
生息時期、発見地域、体サイズ等、かなりバラバラな恐竜がアロサウルス科とされています。現在では、赤字で示した属はティラノサウルス類、青字で示した属はアベリサウルス類と考えられています。
また、「恐竜データブック」という別の本には、スゼチュアノサウルス、ストケソサウルス、ピアトニツキサウルスがアロサウルス科とされていますが、スゼチュアノサウルス属は消滅、ストケソサウルスはティラノサウルス類に、ピアトニツキサウルスはメガロサウルス類になっています。
そもそも上記の属は、そのほとんどが断片的な化石に基づいてしか知られていなかったので、この様に雑駁な分類しかできない状況だったと思われます。
その後、アロサウルス上科は1998年にシカゴ大学のポール・セレノ博士により、「現生鳥類よりもアロサウルス側により近い共通祖先を持つグループ」と定義されました。系統解析も進められ、アロサウルス上科は幾つかのグループを内包する大きな系統であった事がわかってきています。属、種の再検討も進んできたおかげか、今までアロサウルス科として分類されていたものが独立して他の科となったり、全然別の系統に含まれたりと、この辺の流れが日本語で詳しく読める資料が中々ないのが大変です。
下に示す系統樹はテキサス大学のドリュー・エディー博士、アメリカ自然史博物館のジュリア・クラーク博士によるアクロカントサウルスの論文から引用したものです。

これを見ると、最も基盤的な種類の内モンゴルで見つかったモノロフォサウルスを除くとアロサウルス上科には4つの大きな系統があった事がわかります。
■ジュラ紀中期頃に中国やモンゴルに生息していた原始的なシンラプトル類
(シンラプトル、ヤンチュアノサウルスなど)
■ジュラ紀後期に北米及びヨーロッパ(アフリカも?)に生息していたアロサウルス類
(アロサウルス、サウロファガナクスなど)、
■白亜紀前期にほぼ世界中に生息していたネオヴェナトル類
(ネオヴェナトル、シアッツ、フクイラプトル、メガラプトルなど)
■白亜紀前期から後期にかけて南米及びアフリカをメインに生息していたカルカロドントサウルス類
(カルカロドントサウルス、ギガノトサウルスなど)
シンラプトル科は2005年にポール・セレノ博士によって設けられた科ですが、現在はメトリアカントサウルス科と名称が変更になっています。
また、ネオヴェナトル科の中でもメガラプトルやフクイラプトル等の中型のものがメガラプトラ(メガラプトル類)としてまとめられていますが、これらはもしかするとティラノサウルス類である可能性が指摘されています。
次回からは、それぞれのグループのメンバー達のレビューが始まるよ(やるとは言ってない
参考文献:「肉食恐竜辞典」グレゴリー・ポール著 河出書房新、恐竜データブック」デヴィッド・ランバート&ダイアグラム・グループ著 大日本絵画、「最新恐竜辞典-分類・生態・謎・情報収集-」金子隆一編 朝日新聞社、「恐竜の世界」金子隆一著 新星出版社
Eddy, Drew R.; Clarke, Julia A. (2011). Farke, Andrew, ed. "New Information on the Cranial Anatomy of Acrocanthosaurus atokensis and Its Implications for the Phylogeny of Allosauroidea (Dinosauria: Theropoda)". PLoS ONE 6 (3): e17932. Bibcode:2011PLoSO...6E7932E. doi:10.1371/journal.pone.0017932. PMC 3061882. PMID 21445312.
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