変な翼 イー・チー
- 2015/05/17
- 07:28
以前にさわりだけ紹介してたイーについてもうちっと詳細を見てみようと調べてみました。
イー・チー( Yi qi )は、山東天宇自然博物館が購入した、中国河北省のジュラ紀後期の地層(Tiaojishan形成、バトン期~オックスフォード期、おおよそ1億6770万年前~1億5570万年前)から2007年に発見された完全な上半身の化石に基づいて、徐星博士らにより2015年に記載された恐竜です。この名前はイー=中国語で翼、チー=中国語で奇妙な・変なという意味だそうで、属名はたった2文字です。これまでに知られている恐竜の中で、最も綴りが短い属名です。

イーの想像図。
系統解析ではスカンソリオプテリクス科とされています。スカンソリオプテリクス科とは、非常に小型の獣脚類で、木登りが得意だったと思われる系統です。非常に鳥に近い仲間と考えられていますが、最近の系統解析ではオヴィラプトロサウルス類に近縁とされています。特徴としては、手の第3指が非常に長く伸びている点で、原始的な猿のアイアイなどと同じ様にこの指で昆虫を木から引きずりだすのに使用していたと推測されています。

スカンソリオプテリクス科の一種であるエピデクシプテリクス。
科博で2011年に実施された恐竜展より。
イーの最も奇妙な特徴として、手首から指とは異なる棒状の骨?が伸びている事が挙げられます。最初、徐星博士はこの棒状の物が何だか分からず混乱したと述べていますが、中国科学院古脊椎動物・古人類研究所のコーウィン・サリバン博士が、「現生のムササビやコウモリが皮膜を支える為に軟骨で出来た同等の器官を持っている事」を指摘し、またイーの指やロッドの周りから膜の様に見える構造が見つかっていた事から、最も妥当性の高い解釈として、「イーは軟骨性のロッドで皮膜を支えていた」としています。
南カルフォルニア大学のマイケル・ハビブ博士は、現生鳥類でも手首や肘周りに発達した膜を持っている事から、イーがそれを軟骨で拡張した事自体はそれ程驚くには当たらないと述べています。イーが発見されたTiaojishan形成からは、他にもアンキオルニス、ペドペンナ、シャオティンギア、アウロルニスといった最も鳥に近い恐竜、あるいは恐竜に近い鳥が沢山発見されており、翼竜も沢山見つかっています。今回発見されたイーも含め、飛翔への壮大な実験が繰り広げられていたと推測されます。しかし、現状ではイーの皮膜がどの様な形状をしていたのか定かではありません。ロッドの向きによって皮膜は狭くも広くも復元出来ますが、皮膜が広い程、滑空速度が遅くなるし、狭ければ高速で滑空する事ができます。皮膜の形状、機能についてはこれからの研究が待たれます。
参考文献:ナショナルジオグラフィック「Chinese Dinosaur Had Bat-Like Wings and Feathers」、
英語版Wikipedia「Yi (dinosaur)」、「Scansoriopterygidae」
イー・チー( Yi qi )は、山東天宇自然博物館が購入した、中国河北省のジュラ紀後期の地層(Tiaojishan形成、バトン期~オックスフォード期、おおよそ1億6770万年前~1億5570万年前)から2007年に発見された完全な上半身の化石に基づいて、徐星博士らにより2015年に記載された恐竜です。この名前はイー=中国語で翼、チー=中国語で奇妙な・変なという意味だそうで、属名はたった2文字です。これまでに知られている恐竜の中で、最も綴りが短い属名です。

イーの想像図。
系統解析ではスカンソリオプテリクス科とされています。スカンソリオプテリクス科とは、非常に小型の獣脚類で、木登りが得意だったと思われる系統です。非常に鳥に近い仲間と考えられていますが、最近の系統解析ではオヴィラプトロサウルス類に近縁とされています。特徴としては、手の第3指が非常に長く伸びている点で、原始的な猿のアイアイなどと同じ様にこの指で昆虫を木から引きずりだすのに使用していたと推測されています。

スカンソリオプテリクス科の一種であるエピデクシプテリクス。
科博で2011年に実施された恐竜展より。
イーの最も奇妙な特徴として、手首から指とは異なる棒状の骨?が伸びている事が挙げられます。最初、徐星博士はこの棒状の物が何だか分からず混乱したと述べていますが、中国科学院古脊椎動物・古人類研究所のコーウィン・サリバン博士が、「現生のムササビやコウモリが皮膜を支える為に軟骨で出来た同等の器官を持っている事」を指摘し、またイーの指やロッドの周りから膜の様に見える構造が見つかっていた事から、最も妥当性の高い解釈として、「イーは軟骨性のロッドで皮膜を支えていた」としています。
南カルフォルニア大学のマイケル・ハビブ博士は、現生鳥類でも手首や肘周りに発達した膜を持っている事から、イーがそれを軟骨で拡張した事自体はそれ程驚くには当たらないと述べています。イーが発見されたTiaojishan形成からは、他にもアンキオルニス、ペドペンナ、シャオティンギア、アウロルニスといった最も鳥に近い恐竜、あるいは恐竜に近い鳥が沢山発見されており、翼竜も沢山見つかっています。今回発見されたイーも含め、飛翔への壮大な実験が繰り広げられていたと推測されます。しかし、現状ではイーの皮膜がどの様な形状をしていたのか定かではありません。ロッドの向きによって皮膜は狭くも広くも復元出来ますが、皮膜が広い程、滑空速度が遅くなるし、狭ければ高速で滑空する事ができます。皮膜の形状、機能についてはこれからの研究が待たれます。
参考文献:ナショナルジオグラフィック「Chinese Dinosaur Had Bat-Like Wings and Feathers」、
英語版Wikipedia「Yi (dinosaur)」、「Scansoriopterygidae」
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