ティラノサウルス科_ティラノサウルス(7) 生態について_3
- 2014/10/23
- 09:11
3.どの位の速さで走れたのか
ティラノサウルスの場合、体が大きすぎる為、まず走れたか否かが議論されたりしていますが、現在のところ、どんな風に考えられているでしょうか。
1970年代に起こった「恐竜ルネサンス」と呼ばれるムーヴメントの中で、取り分けロバート・バッカー博士によって恐竜が温血で活発な生き物であったという主張がされた事で、ティラノサウルスは結構な速度で走れたのではないかという考えが広がっていきました。バッカー博士はティラノサウルスの足の骨がサイと同程度の強度を持つ事から、時速65kmもの速度で疾走できたと主張しました。ただ、恐竜を含む絶滅動物の速度を推定するのはとても難しい事です。直接走っている姿が見られない以上、足跡化石から歩幅を割り出すか、姿かたちが似ている現生動物と比較するしかなかったのです。
イギリスの動物学者マクニール・アレグザンダー博士が提唱した足跡から動物の速度を割り出す公式があり、コンピュータによるシミュレーションが研究に導入されるまではこの公式に従って速度が考察されてきました。ジム・ファーロー博士はエミューを用いて研究を行い、ティラノサウルスの走る速度を時速40km程度と見積もりました。

全力疾走する姿に復元されたティラノサウルス。実際はどうだったのでしょうか。
2000年代に入り、コンピュータを用いたシミュレーションが行われる様になってきました。2002年にカルフォルニア大学のジョン・ハッチンソン博士が行った研究によると、大人のティラノサウルスは走る事が出来なかったとされました。早く走る為には太ももに大きな筋肉を持たなければなりませんが、その必要な量が計算によれば全身の筋肉の43%にもなるというのです。実際に想定される太ももの筋肉量は10%程であるので、走る事は無理だという結論になった訳です。ただし、この研究においては筋肉の弾性要素や収縮速度などが考慮されていないと発表当初から疑問視する声が多かった様です。
2007年にはマンチェスター大学のビル・セラース博士により新しいコンピュータモデルによる研究が発表されました。この研究ではティラノサウルスは時速29km前後で走れたとされます。これは100mを12秒台で走れる計算となり、人で言えば結構足が速い方です。この説が発表された際には「ベッカムならT・レックスから逃げ切れる」みたいなジョークが海外の記事に書いてあったりしました。現生動物も同様に解析した結果、シミュレーションで得られた速度は実際の速度と一致したといい、現状では最も信頼性のある推定値と考えられます。
参考文献:「大恐竜 T・レックス新発見」 ジョン・R・ホーナー/ドン・レッセム著 二見書房、「新説 恐竜の成長」図録
ティラノサウルスの場合、体が大きすぎる為、まず走れたか否かが議論されたりしていますが、現在のところ、どんな風に考えられているでしょうか。
1970年代に起こった「恐竜ルネサンス」と呼ばれるムーヴメントの中で、取り分けロバート・バッカー博士によって恐竜が温血で活発な生き物であったという主張がされた事で、ティラノサウルスは結構な速度で走れたのではないかという考えが広がっていきました。バッカー博士はティラノサウルスの足の骨がサイと同程度の強度を持つ事から、時速65kmもの速度で疾走できたと主張しました。ただ、恐竜を含む絶滅動物の速度を推定するのはとても難しい事です。直接走っている姿が見られない以上、足跡化石から歩幅を割り出すか、姿かたちが似ている現生動物と比較するしかなかったのです。
イギリスの動物学者マクニール・アレグザンダー博士が提唱した足跡から動物の速度を割り出す公式があり、コンピュータによるシミュレーションが研究に導入されるまではこの公式に従って速度が考察されてきました。ジム・ファーロー博士はエミューを用いて研究を行い、ティラノサウルスの走る速度を時速40km程度と見積もりました。

全力疾走する姿に復元されたティラノサウルス。実際はどうだったのでしょうか。
2000年代に入り、コンピュータを用いたシミュレーションが行われる様になってきました。2002年にカルフォルニア大学のジョン・ハッチンソン博士が行った研究によると、大人のティラノサウルスは走る事が出来なかったとされました。早く走る為には太ももに大きな筋肉を持たなければなりませんが、その必要な量が計算によれば全身の筋肉の43%にもなるというのです。実際に想定される太ももの筋肉量は10%程であるので、走る事は無理だという結論になった訳です。ただし、この研究においては筋肉の弾性要素や収縮速度などが考慮されていないと発表当初から疑問視する声が多かった様です。
2007年にはマンチェスター大学のビル・セラース博士により新しいコンピュータモデルによる研究が発表されました。この研究ではティラノサウルスは時速29km前後で走れたとされます。これは100mを12秒台で走れる計算となり、人で言えば結構足が速い方です。この説が発表された際には「ベッカムならT・レックスから逃げ切れる」みたいなジョークが海外の記事に書いてあったりしました。現生動物も同様に解析した結果、シミュレーションで得られた速度は実際の速度と一致したといい、現状では最も信頼性のある推定値と考えられます。
参考文献:「大恐竜 T・レックス新発見」 ジョン・R・ホーナー/ドン・レッセム著 二見書房、「新説 恐竜の成長」図録
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