ダラダラとアロサウルスについて書いてきましたが、後は胡散臭い種類をチョロっと紹介して終わり。
◆アロサウルス・ルーカシ(
Allosaurus lucasi )
2014年にカンザス州のフォートヘイズ州立大学のセバスチャン・ダルマン博士らによって記載された新種で、ニューメキシコ州自然史科学博物館のスペンサー・ルーカス博士に献名されたものです。
ホロタイプ(YPM VP57589)はコロラド州モンテスマ郡マクエルモ峡谷から発見された部分的な頭骨(左の前上顎骨、上顎骨、歯骨、方形頬骨)、腸骨、左足などで、大人の個体と亜成体が見つかっているとの事です。地層的にはモリソン累層の上部であるブラッシーベイスン部層からの出土で、年代はチトン期(1億4550万年前~1億5080万年前)とされます。
A.フラジリスと比較して
前上顎骨(premaxilla)が短い、方形頬骨(quadratojugal)が堅牢で頬骨との関節突起(jugal process)が短い、方形頬骨の方形骨との関節突起(quadrate process)が頬骨側のそれと同レベルに短い事 で区別されると言います。
ただし、標本が断片的すぎる事、論文中で正式に命名されていないA.ジムマドセニを参照している事などから、有効性を疑問視する意見も多々ある様です。
◆アロサウルス・エウロパエウス(
Allosaurus europaeus )
ポルトガルのロウリンニャで発見された頭骨の約半分と断片的な体の骨から知られる種で、2006年にオクタビ・マテウス博士らによって記載されました。ヨーロッパで発見された為、「ヨーロッパの」という意味の種小名となっています。
生息していた時代はジュラ紀後期キンメリッジ期後期~チトン期初期あたりとされており、全長は7m程と見積もられています。北米と同様、トルヴォサウルスと生息域を共有していました。A.エウロパエウスは、頭骨の細かな特徴が他のアロサウルの種と異なる為、独立した種とされますが、A.フラジリスそのものであるという意見もあるそうです。
◆アロサウルス・テンダグレンシス(
Allosaurus tendagurensis )
1925年にドイツの古生物学者ヴェルナー・ヤネンシュ博士により、タンザニアのテンダグルヒルで発見された(この為、種小名が「テンダグル産の」となった)脛の骨に基づいて記載された種ですが、近年の研究ではアロサウルスの一種とするのを疑問視する意見が大多数の様で、基盤的テタヌラとされているそうです。また、カルカロドントサウルス類であるという意見もある様です。何れにしても、標本が断片的過ぎて確かな事は分からない状況です。推定される体長は約10mで大きな捕食者だった様です。
◆アロサウルス・アンプレクサス(
Allosaurus amplexus )
でかぁいぃ!!説明不要!!(←んな訳あるか
元々はエパンテリアス・アンプレクサス(
Epanterias _支えられている者の意)とされていた種で、1988年にG.ポール博士によりアロサウルスの一種に割り当てられた恐竜です。
エパンテリアスは、オクラホマ州のモリソン累層最上部から発見された大きな2個の背骨に基づいて、1878年にエドワード・ドリンカー・コープ博士によって記載されました。当初、コープ博士は背骨のサイズからエパンテリアスは竜脚類だと考えていたそうですが、1921年にアメリカ自然史博物館のオズボーン博士によりアロサウルスの脊椎に良く似ている事が指摘され、巨大な肉食恐竜である事が判明したそうです。1934年にもうちょいマシな保存状態の2頭分の化石がオクラホマ州で発見されオクラホマ大学で保存されている様です。ジェームズ・マドセン博士によれば、エパンテリアスの全長はティラノサウルスを凌駕する14mにも達するといいますが、大多数の研究者は非常に大型のA.フラジリスと考えている様で、種としての独自性は疑わしいとされます。アメリカ自然史博物館に保存されている標本から推定されるサイズはおおよそ11m位で、まぁアロサウルス・フラジリスのサイズのふり幅の中に納まるレベルですね。
ただ、ロバート・バッカー博士が指摘している様に、A.アンプレクサスはモリソン累層最上部からしか発見されておらず、その他の種よりも遅い時代に生息していた事、同時期は竜脚類の大型化が極大まで進行していた事から、大物を狩る為に大型化した独立した種、あるいは属である可能性もあります。
※種小名のamplexusとはどういう意味なのか?ラテン語だとして訳すと「包接」とか「愛撫」とかいった意味のようだが…
◆アロサウルス・マキシムス(
Allosaurus maximus )
1931年~1932年にオクラホマ州で採取された部分的な化石に基づき、ジャーナリストのグレース・E・レイ氏によって1941年にサウロファグス・マキシムス(
Saurophagus maximus _「最大級の爬虫類を喰らう者」の意)と命名された恐竜です(現在ではサウロファガナクスと名前が変わっています。また別項で取り上げます。)。
A.アンプレクサス(エパンテリアス)と同様、モリソン累層最上部からしか発見されず推定体長10m以上とされ、G.ポール博士は1988年の「PREDATORY DIOSAURS OF THE WORLD」でA.アンプレクサスと同じものとしています。ダニエル・チューレ博士の研究で、A.フラジリスとは背骨の形状が異なる事から、サウロファグス(サウロファガナクス)属は有効とされましたが、非常に大型になるアロサウルスの一種という意見も多々ある様です。いずれにしてもマキシムス種としては有効である様です。
参考文献:「肉食恐竜辞典」グレゴリー・ポール著 河出書房新、「恐竜学最前線7」学研、「Dino Press Vol.2」オーロラ・オーバル社、「最新恐竜学レポート」金子隆一著 洋泉社、「恐竜博2005-恐竜から鳥への進化」図録、英語版Wikipedia「
Allosaurus 」
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